TONARIの 色撮り撮りの「野外彫刻」

広島拘置所壁画
広島県広島市中区上八丁堀2-6 広島拘置所

《広島拘置所壁画》 入野忠芳

 広島拘置所壁画は、広島城築城400年を記念して、入野忠芳氏が制作した作品。
 江戸時代の広島城下の様子を描いた「江山一覧図」をもとに、高さ約2メートル、長さ約200メートルにわたり、コンクリート壁に描かれました。年月とともに傷んだ壁画は、入野氏自身の手で修復され、それが彼の最後の仕事となりました。

 拘置所の移転に伴い壁画は撤去されることが決まりましたが、氏の作品が失われることを惜しむ声から保存活動が始まった結果、壁画そのものは取り壊されるものの、デジタルでの保存が決定され、遺族は陶板への転写による保存も希望しています。巨大な作品の物理的保存は難しいものの、現実的な妥協案といえるでしょう。

 広島は原爆によって多くの歴史資料を失っており、過去とのつながりが断たれている部分があり、こうしたアートを通じて広島の歴史に触れることには、大きな意義があります。

 この壁画は、凹凸のあるコンクリート壁に丁寧に描かれており、街中でこれほどの規模と質の作品が見られるのは貴重です。ただし、拘置所という場所柄、通行人が多いわけではなく、存在に気づいていない人も多いかもしれません。


 私は広島市現代美術館でこの壁画の原画を目にし、見学に行きましたが、作品鑑賞のためとはいえ拘置所を訪れることに心理的な抵抗を感じる人もいるでしょう。もし陶板として保存・展示されるのであれば、より気軽に立ち寄れる場所に展示されるのは良い選択かもしれません。

 今後、この作品がどのような形で人々の目に触れることになるのか、注目していきたいところです。
 

<アクセス>

左の地図を参照のこと。
拘置所の高い壁に描かれているので、自由に見学可能。

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