TONARIの 色撮り撮りの「渓 谷・ 滝」

品の滝  02/3/9
広島県甲奴郡甲奴町

逆光に輝くアテツマンサクの花 
 道路地図を見るのが好きな私は、地図をパラパラめくりながら、記載されている景勝地(滝、渓谷、巨樹等)を見つけては、そこの情報を収集したりしている。
 
 しかし、今回紹介する品の滝は、地図上に記載がない滝であり、たまたま備北エリアのパンフレットに記載があったのを見つけたのが行くきっかけとなった。
 
 
  インターネットで検索してもめぼしい情報はなかったが、自然環境保全地域とあるので、マンサクなどの早春の花がいる可能性は十分あると見て、行ってみることとした。
 
 住所的には甲奴町宇賀であるが、ほとんど吉舎町との町境にある。国道184号を走っていると、吉舎町雲通付近で品の滝の案内が出るのでそこに入る。案内に従い川沿いの道を走り数分で品の滝の駐車場(10台)に到着する。お客さんは私だけだったが、その方が気楽でよい。地面にはオオイヌノフグリやハコベなどの春の花が咲いている。
 
 品の滝は、頭士山から流れ出る滝川に一の滝、二の滝、三の滝の三つの滝を有し、入口から最奥の三の滝まで約1.5qと比較的規模は小さい。
 
 二の滝、三の滝方面は道が荒れているとの情報があったので、登山靴とスパッツを準備して歩き始める。土手にフキノトウがひょっこり顔を出していた。
 
品の一の滝 
 最初はあまり起伏のない平坦な道で道の状態はまずまず。川の流れも緩やかでのんびりとした心持ちで歩を進める。
 
 清流のはずだが、水が少し濁っているのが気になる。上流で土砂崩れでもあったのか。
 
 10分で品の一の滝に着く(左の写真)。
 
 落差11mで、三つの滝の中で最大である。水量もあり、滝壺も広く、夏場などにはのんびりと滝を眺めるのも良いだろう。ベンチも置いてあった。
 
 
 二の滝に向かう。杉の林も続くが、対岸の山の斜面を見ると葉を付けていない落葉樹が覆っている。紅葉の時期はよいだろうなと見上げながら歩いていると、黄色く輝くものが目に入る。今日の目当てマンサクである(冒頭の写真)。
 
 広島県で見られるマンサクはアテツマンサクという種類らしい。特別に豪華な花である訳ではないが、木々が葉っぱも付けていない灰色の世界にあっては、まさしく金色に輝く黄金と言えよう。
 
 遊歩道が川を横切る橋の付近に多く見られた。距離が遠いので接写ができないのが残念ではある。ちなみに光の差し方からして、昼ぐらいまでが写真を撮る場合はベターだろう。
 
 マンサク以外に花がないか下を見ながら歩くが見つからない。イカリソウらしき葉っぱがチラホラ見えるので4月頃来れば会えるかもしれない。
 
 
光り輝くコケ 
 この品の滝の渓流の特徴か、岩や木についた緑のコケが非常に多い印象を受けた。
 
 逆光に輝くコケと言うのもおもしろい被写体だが、なかなか画面構成も露出も難しい(左の写真)。
 
 
 
 次の橋を渡るところで川は二手に分かれる(正確には2つの川がひとつになるというのが正しかろうが)。
 二の滝、三の滝は左手の川なのだが、こちらの水はかなり濁っている。右手の川は多少の濁りが見られるがまずまずきれいである。ちょうどナイル川の白ナイルと青ナイルの合流地点のようだ。地図で見ると産廃の処分地が近くにあるようで何か関係があるかもしれない。
 
品の二の滝 
 水の濁りが顕著となり気が沈むが、やがて二の滝に着く(左の写真)。
 落差7mの小規模な滝のため面白みがないので、二の滝の前の小さな滝と合わせて二の滝と思っておこう。二の滝の上流にも滝があるので2.5の滝とでもしておこうか。
 
 奥に見えるのが二の滝。
 
 さて、これからの道は少々危険を伴う。ロープを伝って川を渡り、右に左に川を4回くらい渡る。橋はなく、川の中の岩の上を踏むことになるが、下手なコース取りをすると滑って危険なので十分考えてから渡るように。
 雨で増水したり、濡れて滑りやすくなっている場合は、ここから先は断念するのが賢明だろう。男性の方はこの程度大丈夫と思われると思いますが注意に越したことはありません。
 
品の三の滝 
 三の滝へのアプローチは2通り。ひとつは、道に従ってロープが張ってある急坂を登って、平坦路を少し歩いたところに三の滝の標識がある。
 
 標識の側から急なところを慎重に下り、滝を見下ろせる場所に着く。狭く断崖絶壁なので要注意。危険な割に手前に木があって写真的にはおもしろくはない。
 
 もうひとつは、坂を登らず川沿いに歩き、滝の正面に出る(左の写真)。
 
 三の滝は落差9mだが、一の滝より大きく見える。滝の表情も良く、スローシャッターで流すと雰囲気のいい写真となる。3倍以上の落差があって、周りの紅葉が良く、水が濁っていなければ日本の滝100選に選ばれても良いかもしれない。
 
変わったキノコ 
 帰りに分岐のところでもう一方の川へ少し歩いてみた。小さな滝があり、水がきれいな分こちらの方が二の滝よりいいかもしれない。
 
 ちょっと変わったキノコを見つけたので参考まで写真を載せておきます(左の写真)。
 
 名前をご存じの方は御一報下さい。
 
ユキワリイチゲ 
 今日の花はマンサクだけだったが、「まず咲く」が語源といわれ「タニイソギ(谷急ぎ)」の別名があるくらいの花だから、この花が咲いている時分は他の花はまだなのだろう。
 
 と、思って歩いていると、目の端に白い花が見えた。いた。ユキワリイチゲだ。早速図鑑で確認する。菱形の葉っぱが特徴的なので間違いない。
 
 行きには気付かなかったが、日の光を浴びて開花したようだ。そこそこの群落だが、5m四方のその区域だけ咲いていて、回りを探すが葉っぱも見つからない。そこだけ開けているので地元の方が手入れされているのかもしれない。
 
 他の場所でも咲いているのを見つけた。一度見つけてしまうと他の場所でも見つかるようになるのだから不思議である。
 
 
 はじめて地図に載っていない滝に行ったが、そこそこ整備してあり、水の濁りが残念だが、落ち着いた良いところである。
 写真を撮りながらゆっくり歩いて約1時間で三の滝まで行ける。
 
 この時期は総領町でセツブンソウ祭りが賑やかだが、人混みが嫌いな私としては品の滝のような静かな場所が大好きだ。また、人にあまり知られていない場所を探してみよう。
 
 思いがけずユキワリイチゲに出会えてうれしかったが、心ない盗掘者によって根こそぎ持ち去られないか心配である。
 野生の花は自然の中で咲いているのが一番きれいなのであって、庭に植えて飾っても、華やかな園芸種の中にあっては存在感がなくなると思います。きれいな、かわいい花を愛でる機会を他の方たちにも残しておいてください。

 
 

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