TONARIの 色撮り撮りの「紀行」

四国最南端 足摺岬と 名勝 竜串・見残し海岸 03/5/3
高知県土佐清水市

足摺岬 
 連休が始まる前日の夜、阿賀港から堀江港に向けて呉・松山フェリーに乗った。連休後半の初日とあってフェリーには多くの乗客がおり、この後の夜行に備えて毛布をかぶって仮眠を取っていた。

 翌日の零時半、フェリーは堀江港に到着し、四国最南端足摺岬に向けて走り出す。松山ICで高速に乗り大洲ICまで走り、国道56号を南下、宿毛で国道321号に入って更に南下する。

 夜間の上、知らない道なので標識に注意しながら進む。最近は各地に道の駅が出来ていて休憩場所が充実して助かる。

 何回か山越えをし、そろそろ運転が嫌になった頃、暗闇でよく分からないが、海岸線を走る快走路となる。町中に入り県道27号へ直進(国道321号は左折)し、スカイラインの案内が出るのでそれにしたがって足摺スカイラインに入る。昼間なら景色がよいだろうが、夜なのでおもしろくない。
 
 山を越えて海に向けて下り、突き当たりを左折するとまもなく足摺岬の駐車場に到着する。既にほぼ満車状態でやむなくバス用のスペースに駐車。観光バスが来るのにはまだ早いので、それまで置かせてもらおう。堀江港から約4時間。深夜の長距離運転なので5時間程度はかかると見ておいた方がよいだろう。

 到着したのは午前4時半過ぎで、眠らずに運転していたのでさすがにお腹が空き、朝食用のパンを食べる。足摺岬に先に来たのは地平線から上がる御来光を見るためだったが、すでに空が白んできたので仮眠を取ることなく足摺岬に向かった。
 
椿のトンネル 
 椿のトンネルを潜り(左の写真。もちろん花は咲いていない...)、展望台に向かう。太陽はすでに顔を出していたが、厚い雲が水平線にあり、完全には顔を出してはいなかった。

 足摺岬灯台はパンフの写真でよく見るまんまで、垂直に近い懸崖の上に乗っている(冒頭の写真)。

 見渡せば太平洋が目前に広がり、瀬戸内では見ることの出来ない水平線が伸びる。

 朝日がのぼり、辺り一面にオレンジ色の光が注がれる。朝日というのはいつ浴びても気持ちの良いものだ。

 再び椿のトンネルの中に入り、天狗の鼻を目指す。先程の展望台より低い位置にあるので海がより近くなり、断崖絶壁にある灯台と先程の展望台を見上げるようになってその高さが実感される。
 
 次にビロウの自生地に向かう。ビロウはシュロの仲間で、昔はその大きな葉っぱを利用してウチワにしていたらしいが、この地が自生地の東限とのこと。朝早いためスローシャッターになってブレてしまったので写真は載せないが、大きな葉っぱが特徴でまさにジャングルと言った感じだった。少し辺りが開けていると”絵”になるのだが、贅沢は言うまい。
 
 萩の笠山ヤブツバキ原生林と同じように道の両側をツバキが覆うが、足摺岬のそれは大きなものが多いように感じた。花の時期は椿祭りが催されるそうだが、花が咲いている時期はもっと良いだろう。
 
シャリンバイ 
 次に足摺岬灯台に向かう。足摺岬一帯は遊歩道が整備されているので、植物観察しながらゆっくり見るつもりなら丸1日楽しめそうだ。灯台の周りにはシャリンバイの花が満開でとてもきれいだ(左の写真)。

 
 
 次に白山洞門に向かう。
 熱帯の植物園の中を歩いているような遊歩道を進み、突き当たって左のかなり急な階段を下ると、国の天然記念物に指定された白山洞門が見えてくる。
 
白山洞門
 自然が作り出した巨大な花崗岩の洞門で、門をくぐって押し寄せてくる波がきれいだ(左の写真)。

 岩だらけの浜にはハマエンドウやハマアザミが咲き、山肌にはタツナミソウが咲いている。

 
 この洞門の上には神社があるそうで、この洞門ではこの地域の人の何らかの宗教的な儀式が為されていたのかもしれない。

 下りてきた急な階段を登り、登り切った後は元の道に帰らず、そのまま直進して県道に出る。足摺岬の駐車場に向かう手前に異様な大木が並ぶ場所があったからだ。
 
タブノキ 
 初めはクスノキかと思ったが、どうやらタブノキのようだ。幹周りはどれも3m近いと思われる力強い生命力を感じる大木達である。左の写真のものは大きな空洞が空いていた。
 
 近くをウロチョロしているとカラスビシャクがユニークな姿で群生していた。
 
 ちょっと歩くと駐車場に戻る。バスの駐車スペースに停めていたので、あまり長居をすると迷惑になるので次の目的地に向かう。既に路上駐車が多くなって、交通が滞り始めていた。次は松尾神社のアコウを目指す。

 だいたいの場所しか分からず少し迷ったが、地元の人に場所を訊いてやっとたどり着けた。足摺岬から西進し、スカイラインに乗らず狭い道に入る。右にカーブするところの左側に下る道があるので下ってゆくと道沿いにアコウの巨木が構えている。
松尾のアコウ 
 幹周り10m近い巨木で、細い木が寄り集まったような姿をしており、板根なども見られる。

 道の反対側には中が空洞化した螺旋状に伸びるアコウが見られるが、これは朽ちているのではなく、アコウが何かの木に巻き付き、最後には絞め殺したと思われる。

 異様な生命力を感じる巨木である。

 
 また、少し車で行ったところにアコウの自生地がある。元の道に戻りしばらく進むと、海側(左側)に大きな樹冠をした巨木が見える(下の写真)。広い道に出たら行き過ぎなので引き返そう。
 
アコウの巨木 
 墓地にアコウの巨木が3本見える。幹周りは8mくらいだろうか、お墓を護るように大きく枝を広げている。

 図鑑の説明によればアコウは防風林として使われるそうである。松尾のアコウに比べると樹高では劣るが、枝張りや、包み込むような樹形をしており、異様さよりも落ち着いた感じを受ける。
臼磐 
 次に黒潮が最初にぶつかる場所といわれる臼碆に向かう。

 駐車場に車を停め、展望台の方へ登る。少々急だが距離はない。展望台からは360°の展望が得られ、足摺岬までの荒々しくも美しい海岸線が続き、龍王神社、臼碆灯台、竜串方面と多くを見渡せる(左の写真)。
 
 下を見下ろせば鮮やかな青い海と、釣り人の群。釣りのスポットとして有名らしいが、荒波の押し寄せる小さな岩の小島の上で怖くないのだろうか。

 次に臼碆灯台に向かう。駐車場に戻り100mほど下ると入口があり、そこから緩やかに下ってゆく。5分もすれば灯台に着く。やはり海が近づくだけあって海の青さがいっそう濃くなり迫力が増す。ここからは釣り人の姿がよく見え、あちら側もこっちを見ている。
 
 次に竜串の海底館に向かう。
 竜串に向かう海岸線の道は狭いながらも美しいので、良いドライブコースである。路上駐車の車が時折見られるが、磯釣りの人たちのものだろう。国道321号線に戻り道の側にある海底館の駐車場に車を停める。インターネットの海底館のHPに割引特典が出ていたのでプリントアウトして持っていった。900円が600円になるので結構助かる。海底館まではちょっと歩くが、蜂の巣のような岩や”クジラの昼寝”岩など特徴的な岩があっておもしろい。また、途中に見残し海岸に向かうグラスボートの乗り場がある。

 海底館は海に突き出た塔で、水深7mまで階段を下ってゆく。四方八方に窓があり、そこから海中を覗く。透明度はいまひとつだが、きれいな色の魚が見えると楽しい。流れが急のようで、魚が行ったり来たりするのもおもしろい。ただ、900円は取りすぎだと思うが...

 見残し海岸に行く前に昼食を済ませる。竜串の駐車場に入り、駐車場の端にある久海というお店に入る。かつおのたたき定食を頼んだが、かつおの身がごつくて食べ応えがあり、タレはポン酢ではなく甘露しょうゆに近いものだった。これが本場のたたきなのだろうか。なかなかおいしい!
 
見残し海岸 
 昼食後はグラスボートで見残し海岸に向かう。見残し海岸に向かうグラスボートは2つあるが、竜串の方にインターネットの割引があったのでこちらから乗ることにする。乗船料は往復1000円で、割引は1割。ゴールデンウィークとあってそこそこ多くの乗客が乗り込んだ。

 途中、サンゴが見える位置で留まり、サンゴに集まるきれいな魚を見て、見残し海岸の船着き場近くにあるシコロサンゴを見る。ユニークな形をしたきれいなサンゴで、この附近にしか見られないとのこと。

 見残し海岸は、弘法大師があまりの難所のため見残したということから名付けられたそうだ。陸路でも行けるようだが、時間もないし、観光気分で来ていると長い距離を歩くのはめんどくさい(笑)ので船が一番楽でいい。ただし、一通り見て歩くと1時間以上かかるので結構運動になる。
蜂の巣状の岩 
 見残し海岸にある岩の特徴は、蜂の巣のような小さな穴が無数に空いていることだろう。岩質は砂岩だそうだから浸食に弱いと思われるが、なぜ蜂の巣状になるのだろうか。

見残し海岸 
 また、点々と丸くて茶色いボールのような岩が現れる(左の写真の手前)。ノジュールと呼ばれるもので、岩石の芯に当たり、硬度が高いため周りの岩が浸食されてもここだけ残る。

 他にも波が作り出した個性的な岩が続き、地質学に明るい人はかなりおもしろいのではないだろうか。

 見た目と違って岩は滑りにくいので安心だが、凹凸が多いので長く歩いていると足の裏が疲れる。登山靴かトレッキングシューズの方がよいようだ。

 天気が良いせいか、海の色が大変きれいで、打ち寄せる波は豪快で気持ちがよい。これでもおそらく凪なのでろうが、穏やかな瀬戸内に暮らす人間からみるとそう感じる。
渦巻き岩 
 岬の突端の屏風岩までいくとここから引き返す。途中山に登る遊歩道があるので帰りはこちらを歩く。結構急で、天気も良いので日陰とはいえ少し汗ばむ。坂の最高点に展望台がある。強い直射日光さえなければしばらく眼前に広がる景色を楽しみたいところだが、少し楽しんだ後、日差しを避けて船着き場に向けて下ってゆく。
 
愛情の岩 
 グラスボートはだいたい30分おきくらいに来るそうで、運が良ければすぐ乗れ、時間があるようだったらジュースでも買って待っていればよい。
 
 グラスボートを下りたら竜串に向かう。船を下りて海岸に向けて少し歩けば着く。こちらも見残し海岸と同じく蜂の巣状の岩が多い。見残し海岸の後に行くと感動は薄いかもしれないが、「大竹小竹」は見る価値がある(下の写真)。
 
竜串 
 まさに竹を思わせる岩で、竜串のパンフにはこの岩がよく出ている。波によって浸食されただけなら、筋が残るだけのように思うが、何故か竹の”節”が出来ているのである。風化による亀裂にしては、節がきれいに形成されているのが不思議だ。
 
 このまま歩いても良いが、ちょっと疲れたので大竹小竹で引き返し、木陰で休むことにした。爽やかな海風が気持ちよい。ハマヒルガオが点々と咲き、薄い紫色のセンダンの花が咲いている。

 ゴールデンウィークの割に駐車場はあまり埋まっていなかった。誘導員も土産物店も暇そうだった。足摺岬に行く観光客の1/5しかこちらに来ないそうだ。個人的にはこちらの方がいろいろな岩を見られておもしろかった。いわゆる穴場であろう。

 帰りは朝は暗くて見られなかった国道321号線(サニーロード)沿いに続く美しい海岸線を見ながらドライブ。しかし、宇和島の手前数十qで、やはり恐れていた渋滞に捕まった。船の時間があるので焦らないように先に夕食を取ることにする。チェーン店らしきラーメン屋に入ったら結構おいしく満足。しばらく渋滞を繰り返しながら(渋滞を抜けると、なんで渋滞しているのか不思議に思うことが良くありますね)高速に乗り、たいした渋滞もないまま堀江港に着き帰宅した。
 
 足摺岬灯台を見るだけだと遠いだけで面白みがないが、美しい海岸線、アコウの巨樹、ユニークな自然の造形美など興味を持って探すといろいろとおもしろい地域である。
 
 

Copyright(C)2001-2002 All Right-reseaved tonari