<参考タイム>

廃タイヤ
工場

(20分)

鉄の橋

(70分)

オオタキ

(35分)

クルソン
分岐

(35分)

源流
ポイント

(20分)

オオタキ

(40分)

鉄の橋

(15分)

廃タイヤ
工場

源流ポイントまでは説明を受けた時間も含まれているので、時間が長くなっています。
TONARIの 色撮り撮りの「山 行」

太田川源流の森エコツアー (in 吉和冠山) 08/7/27
広島県廿日市市吉和

水源のブナ 
 数年前くらいからか、エコツアー、エコツーリズムという言葉を聞くようになり、新しい旅の形態として注目されているというので、どんなものか興味を持っていた。

 しかし、エコツアーを広島で行っているということをあまり聞いたことがなく、別の地方のエコツアーに参加してみようかと思っていたところ、私が所属しているNPO法人「環・太田川」主催でエコツアーが行われるというので、これ幸いにと参加することにした。

 内容は、森のことを学びながら、広島市や呉市に水道水を供給している太田川の源流、吉和冠山の中腹を目指すというもの。講師は吉和文化教育センターの竹田所長。

 9時に県庁近くに集合。
 年齢が上の方の部と、高校生以上の青年の部の2つに分けて、それぞれ土日に行われたが、私は仕事の都合で青年の部に入れていただく。なお、土曜日の組は中国新聞の記者さんが同行して、日曜日の紙面に紹介されていたので、ご覧になった方もあったのでは?。

 参加者は講師の竹田所長を入れて総勢10名。うち5名は大学生。集まってみれば、ちゃんと”登山”の装備をしているのは私だけで、リュックを背負われている方も軽装(^^;本格的な山登りでもないのだが、ちょっと山を舐めてるな〜などと一回り上のオジサンは思ったりする(笑)まあ、一眼レフとレンズを入れる都合で大きなリュックを持っていっただけなのだが、山に登るのに雨具を用意しないというのはちょっと考えられなかったりする。山登りをしない人が多いので仕方ないかな。(^^)

 高速に上がって吉和ICに下り、弁当を補給してから魅惑の里でトイレ休憩した後、潮原温泉側から冠山登山口に入る。出来れば鉄の橋の所まで入れると楽なのだが、他の車で詰まっていると途中で出会った下山途中の登山者に聞いたので、廃タイヤ工場の隅にバスを置く。ここから道路を進み登山口を目指す。
 
吉和冠山マップ
吉和冠山MAP


赤い線が登山道(今回のコースは途中まで)
青い線が川
灰色の線が道路
等高線の間隔は50m

左の地図では表示していないが、今回の目的地は、クルソン仏岩に続く尾根の少し下側になる。
コウゾの赤い実 
 途中で和紙の原料として知られるコウゾの赤い実を見つけ、大学生一人が代表で試しに食べてみる。甘くて美味しいとのことだが、運が悪いと大変なことになるらしい(笑)帰りに私も食べてみたが、幸いにも?甘くて美味しかった。

 やがて砂利道になり、少し登れば登山口になっている鉄の橋まで来る。標高は高いので気温は低いのだが、雨が降った後なので湿度が高く、ここまで登っただけでも汗がよく出る。気づいた人はいなかったが、下の写真のように「長いもの」もひょっこり顔を出していた。”長いもの”

 鉄の橋のところで竹田所長のお話。
 今ある姿には理由があり、理由があるから今の姿になっている。何故そうなっているか考える洞察力が必要である、と。

 例えば、針葉樹が上から下まで葉を茂らせていること、広葉樹が上の方にこんもりと丸く葉を茂らせていることは何故なのか。答えをここで書くとつまらなくなるので書かないが、「なるほど」というお答え。多く山に登って当たり前の光景として見ているので、そういう見方をしたことが無かった。当たり前は当たり前として、何も疑問に思っていなかった。

 私の世代は人口が多くて受験戦争が一番キツかった世代。なので疑問を見つけて考えるより、与えられた知識を頭に詰め込んで覚えることの方が得意で、自ら疑問を見つけ出す力はとんと無いようだ(失笑)
またたび
 登り始めたと思ったら、マタタビの実(左の写真)があり、代表で私が一囓りする。

 最初はピーマンのような味だが。。。辛い!しし唐辛子の辛いのに似て、痺れるような辛さ。

 マタタビ酒にしたりすると図鑑などに説明はあるが、食べてみたらどんな味がするかまでは書かれていない。実際に体験してみるとこうして他の人に話せるし、説得力も増す。
登山道を進む参加者ヤマゼリかな 
 写真を撮る関係上、他の人の邪魔にならないように最後尾について歩く。

 被写体を見つけると突然立ち止まったりするので、カメラマンのすぐ後ろを歩くのは危険でなのである(笑)

 ウバユリやヤマゼリなどが咲いているので、それらを撮りながら歩いているとだんだん遅れて行ってしまったが、早足で追いつく。

 私のように写真を多く撮る人間は、こういう団体行動は難しいところがあり、焦って写真を撮ってしまうので、今回はピンボケ・手ブレ写真が混じるが、勘弁していただきたい、と言い訳をしておく(^^;
スギ林ヒノキ林

 川のそばの植林の中の道を進み、向こうにヒノキの植林地が見えるスギの植林地前で止まる。上の写真の左側がスギ林、右がヒノキ林である。

 こちら側のスギの植林地と向こうのヒノキの植林地との違いは何か?

 見た目ですぐ分かるのは、スギの植林地には下草があるのに、ヒノキの植林地には下草がないこと。
 続いて土を手に取って観察。この土の特徴は?との問いに答えが出ず、竹田さんが説明される。
 森の土はツブツブになっている。このツブツブを団粒構造といって、このツブツブの間に水分が蓄えられ、下草が多く生えることによってそうしたツブツブの土が流出せずにいられるとのこと。下草が生えて森の土が出来ていれば、針葉樹の植林地であっても、保水力は自然林と変わりない。

 ヒノキの植林地に移動し、なぜ下草が生えないのか考えてみんなで意見を出す。
 間伐されていないので林床まで光が当たらないことと、ヒノキが出す生育阻害物質が原因であるそうだ。確か厄介者として知られるセイタカアワダチソウもそんな物質を出していると聞いたことがある。

 そして自然保護についても言及。
 木を伐るのはいけないことかと問われれば、「場合による」と。

 林業は木を伐ることを前提とした産業で、売っても儲からないから間伐もされずに放置されているのが問題になっている訳で、こうした人工林は伐らないから問題を起こす。

 そう言えば、一部に木を伐ることが悪いことと主張している人がいるには確か。一方的な見方ではダメで、逆の見方もして広い視野に立って考えないといけないのである。
 
登山道 
 もう少し進んで水がしみ出ている場所で立ち止まる。

 先程団粒構造の話をしたが、森の土を手に掴み、握りしめると水が滴る。森の土壌をスポンジと表現されることもあるが、確かによく水を含んでいる。

 また、なぜこうした自然の中にいると気持ちがよいのか?と問いかけられる

 周囲に水分が多く漂っている。光が良く入っている。川のせせらぎが聞こえる。マイナスイオンがいっぱいあるなどいろいろ答えがでたが、竹田さんのお答えは。。。言われればそうだと思うが、意外と気づかない答えで一同納得。

 ツアーに今後参加することがある方に申し訳ないのでここでは書かないが、これは以前、ある山に登って山頂から辺りの山々を見た時に私が感じて、それをホームページの山行記にも書いたことである。昔はそう感じていたのに、変に山に慣れて感動する心が萎えてしまっていたのか。ヤマアジサイ
 

←ヤマアジサイ
河原で休憩ウバユリ 
 この時期森の中にはあまり花はないのだが、ヤマアジサイやウバユリ(左の写真の右側)は良く咲いている。

 ウバユリは結構な数があり、蕾が多いので来週でも良さそうだ。

 花はないがマムシグサ、エンレイソウ、ミヤマカタバミなどの葉っぱが見える。まだ蕾だが、クサアジサイと思われるものも割と見られる。

 河原に下りられる場所で休憩を取る(左の写真の左側)。
カエル沢ガニ 
 川を見ていると岩の上にカエルがいて、ジッと我々を無視しているかのように動かない。背中を棒で撫でると、気持ち良さそうにするのだとか。

 また、毒を持つものもいるので、素手で触らないように注意を受ける。カエルに小便をかけると酷いことになるという話があるが、そういう訳があるようだ。

 カニも登山道を横切っていた。
オオタキ 
 再び歩き始め、左に大きな岩の崖が見えだしたらまもなくクルソン谷に分岐するところのオオタキに到着する(左の写真)。

 オオタキとは大きな懸崖のことで、タキ=滝ではない。

 河原に下りられるのでここで昼食にする。説明を聞きながらだったので、意外と時間を取られた。

 昼食後は今までより傾斜の増した山道を登る。これまでは周りが植林地だったが、これからは広葉樹林の中を登る。
ミズメ 
 少し登ったところで、竹田さんがナイフを取り出し、桜に似た樹皮の木に傷を付ける(竹田さんは所有者の許可は取っているが、他の人は勝手に傷つけないように)。

 そこを嗅いでみるとサロンパスの臭いが。。。この木にはサロメチールの成分があるのだ。標準和名はミズメで、梓とも呼ばれ、またヨグソミネバリ(夜糞峰榛)とも呼ばれる。

 また少し登って蔓植物を発見。キーウィフルーツの元になったサルナシである。砂糖漬けにしたものを販売しているところを見ることがあるが、断面はまさにキーウィである。残念ながら、成っていたとしてもかなり上の方なので収穫はできない。
森 
 また登って小休止。

 今度はこの森を見て何か不自然な所がないかとの質問。

 見渡してもよく見る山の自然。何だろうなと考えるがよく分からない。これも答えを言うと面白くないので書かないが、そう言えば森の構造を表した模式図には書いてあることだった。

 この不自然さからこの森がどういう経緯を辿ったかが推測できるそうだ。なるほどね〜こういう見方をする訳だ。

 また別の場所ではキハダの樹皮を切り出し、みんなで舐めてみる。漢方薬で使われるだけあって、薬のような苦さがある。
トチバニンジンモミジガサ 
 途中で見た植物を紹介する。

 左側がトチバニンジン。秋になると赤い実をつける。でもきれいに全部残っていることは少ないかな。

 右側はモミジガサ。地味な花で、咲ききった時より、蕾くらいの方がきれいだったりする。
ウバユリハナイカダ 
 左側はウバユリ。存在感のある大きな花なのだが、色合いのせいかあまり好かれていないような気が(^^;たまにたくさんの花をつけた背の高いオオウバユリかと思われるような個体を見ることがある。

 右側はハナイカダ。葉脈の上に花が咲くユニークな植物。今は実が付いている。
大木 
 クルソン岩の分岐の所まで頑張って急坂を登る。ここで小休止し、すぐ目的地に着くとの説明でもう一踏ん張りする。

 山登りをする人にはピンと来ると思うが、山でのもう少しは結構歩いたりする(笑)実際、距離的にはあまり無いのだが、急坂なのでちょっと辛い。

 右手の谷からせせらぎの音が聞こえ、ヒグラシの大合唱に包まれる。

 途中でまた集まり、今度は漢字クイズ。

 4枚の絵から2つの漢字を導き出すというもの。これも答えは書かないが、源流の場所を表した漢字で、昔の人の知恵が分かる。

 やがて目的地のすぐそばまで来て、ここでリュックを降ろして、源流の水を汲むためにペットボトルを用意して源流に向かう。
太田川源流 
 小さな沢を少し登ると、先程の漢字クイズで説明された通りの場所に太田川の源流がある(左の写真)。

 もちろん源流というのはここだけではなくあちこちにあるのだが、漢字に隠された意味を理解するにはロケーションが良いのだ。

 すぐそばには推定樹齢250年という苔むしたブナの大木がある。目測では3m弱、樹高20mくらいか(冒頭の写真)。

 参加者が順に源流から水を汲む。水量はそれ程多くないので多少時間はかかるが、飲んでみれば冷たくて美味しい。


 時々山の水を飲むことがあるのだが、やはりブナのある山の水は美味しいのだ。味も美味しいが、ここはよく冷えていて余計に美味しい。

 なるほどね〜こういう場所から水が出る訳だ...今度山に登る時はこういう地形を探してみよう。地形図で何となく分からなくもないのだが、そこまで読図技術は高くないので難しいかな。
 
森 
 みんな水源の水を汲んだ後、まとめのお話。
 「飴」を「雨」に見立てて森の役割を説明。

 一度に全部の”あめ”を放り投げても、実際に受け取れるのはわずかだが、一つずつ放り投げていけば無駄なく受け取ることが出来る。森の土は団粒構造になっているので雨を蓄えることができ、少しずつ下流に水を供給している。上のヒノキ林のように森の土が無いところでは、一気に水が流れ出してしまうのである。

 細見谷林道問題についても触れられ、ご自身の考えは表明されなかったが、一方の意見だけでなく、他方の意見も聞いた広い視野で考えるべきと指摘された。これは私も賛同するのだが、細見谷林道を舗装するデメリットを上回るメリットを明確に示されたことがないのだが(^^;
サワグルミかな? 
 みんなで飴をなめながら下山。

 ペースが違うのでバラバラに下りて行き、私は写真を撮りながら下って行く。

 オオタキの所で集合。みんなが集まるまでに河原に下りて頭と顔を洗ってサッパリする。頭を洗ったので、帽子からヘアバンドに切り替えた。気温は高くないが、今日は湿度が高いのでよく汗が出る。ずっと森の中なので直射日光に晒されないだけ楽ではあったが。

 ここで急坂は終わったので後は楽に下ってゆく。

 最後に登山口の鉄の橋のところで、これから広島湾に注ぐ水に参加者全員っで手を振って別れを告げる(^0^)/~~

 太田川の源流はここだけではないので、ここから流れていく水が水道水となっていつか私が飲むことになるのかは不明だが、今までに飲んでいるだろうし、これからも飲むことがあるはずである。

 今回エコツアーというものに参加させていただいて、いかに自分が漠然と自然と接していたのか気づくことができた。初めはそれでいいと思うのだが、自分のホームページは、自然に接するきっかけを皆さんに提供するというスタンスで運営しているので(えっ、初耳^^?)、これからは他の人とは違った視点で山なり、滝なり、花なりを紹介していけたらと思う。

 今ある姿には必ず理由がある訳で、時間が経って環境が変わればそれに相応しいように自然も変化しているはずである。なぜその姿であるか洞察するだけの目を養うことが出来れば、自然の見方が今までよりも深くなり、その分面白く感じることだろう。皆さんもエコツアーというものに参加してみると新たな気づきがあって面白いと思う。
 
  

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