TONARIの 色撮り撮りの「山 行」

紅葉の 石鎚山 02/10/5
愛媛県上浮穴郡面河村/西条市

紅葉の石鎚山 
 紅葉の時期は山登りをする人間にとってはとても楽しい時期であり、一番いい時期にどの山に行くか毎年頭を悩ませている。
 
 10月初旬で紅葉を楽しむことは広島県の山では早過ぎるが、西日本最高峰 石鎚山ではちょうど良く、天気も良さそうなので、約7年ぶりに登ってきた。

 
 22時半、阿賀港から呉−松山フェリーに乗り堀江港まで約2時間、堀江港から国道196号、国道33号と南下する。三坂峠を越え(夜間は走り屋がいるので、さっさと道を譲る)、県道212号、国道494号と、石鎚スカイラインの案内に従い、最後に県道12号に入る。

 石鎚スカイラインの入口の関門には2時前に到着するがゲートは閉まっている。落石があるため夜間通行止めとのこと。ゲートが開いているのは午前7時から午後6時(夏場は午後8時)まで。
 朝早く歩きたかったのだが仕方ないので駐車場に車を止め、車内で休息をとる。しかし車の中では寝付かれずたびたび目が覚めてしまう。体をほぐそうとひんやりとした車外に出て空を見上げると星がとてもきれいだった。(寒いので、毛布を持っていった方がよい。)

 午前6時に再び目が覚め、朝食とトイレを済ませる。ゲート前に1台車が止まったので、その後ろに車をつけた。ゲートの開門はきっちり7時で、並んでいた車は10台くらい。追い立てられる感じになったので途中の展望台に入り、これから登る石鎚山の雄姿を眺めた。
 
 土小屋の駐車場は朝早いにもかかわらず3〜4割埋まっている。下りるときはもっといたのだが、国民宿舎下の駐車場は空きスペースがいっぱいあったので、止められない場合はここまで来ればいい。
 
登山道より瓶ヶ森を望む 
 国民宿舎の駐車場に車を止め、トイレと身支度を済ませる。国民宿舎奥の道から登り始め150m程登ってもう一つの登山口と合流する。
 
 石鎚山の登山ルートとしては、ロープウェイのある成就社からのコースと、面河渓から登るコースと、今回の土小屋からのコースなどがある。一番楽ちんなのは土小屋からのコースで、多少のアップダウンがあるものの成就社コースとの合流地点まで全体として水平道だからである。
 
 最初は樹間の中を歩き、ベンチが置いてある少し広い場所に来ると展望が開ける。前方に石鎚山山頂が見え、まだ遠くなので鮮やかさは伝わらないが紅葉した斜面が望める(冒頭の写真)。
 
 ササに覆われた日当たりの良い道を歩いていると、リンドウがチラホラ顔を覗かせる。小さなピークの上に立つたびに山頂が望めるので、登ってゆく楽しみが出来ておもしろい。他の登山者も見晴らしのいい場所に来ては休憩を兼ねて山頂を眺めている。
イヨフウロウ 
 森の中に入ると、落花したヤマハッカがところどころで群生している。
 
 他にはアキノキリンソウ、ハガクレツリフネがまだ残っている。(ちょっと自信はないが)ミソガワソウもいくらか咲いていた。
 
 まだ、イヨフウロウが咲いていた。ここのイヨフウロウは花弁に3つ小さな切れ込みがある。広島の山で見るイヨフウロウは切れ込みがわずかか、ない場合が多いように思う。図鑑では切れ込みがある場合が多いとある。同じ種類でも地域で異なるようだ。
石鎚山頂付近を見上げる 
 少し木々が開けると紅葉した石鎚山北面の見事な紅葉を見上げることが出来る。
 
 遠くに切り立った山頂を見ていたのに、徐々に山頂部が横に広がり北面に回り込んできたことが分かる。
 
 
紅葉 
 光の具合はもう数時間早いほうが良かったと思うが、青空をバックにした紅葉が日光で輝き、とてもきれいだ。
 
 しかし、山頂部の紅葉はきれいだが、登山道周辺の紅葉の輝きがもう少しで、少し葉っぱが傷んでいるような印象を受ける。一番良かったのが左の写真の木だった。
二の鎖 
 水の流れていない沢を4回越すと、2時間強で成就社コースと合流し、鳥居を潜りすぐに二の鎖に着く。
 
 迂回路もあるが、せっかくなので鎖を使うことにする。足の掛かりが少ない場合は腕力と握力で登るので、自信のない方、特に女性の方は遠慮した方がよい。それでも登りたいのならば、岩登りに関し信頼できる人に下にいてもらい、アドバイス及びサポートしてもらえばよい。
 
 鎖場は数カ所登りにくい場所があるので、注意して、時折振り返って写真を撮りながら登り切る。途中、迂回路に向かうエスケープルートがあるが、危険な個所を過ぎた後なのでそのまま登ってもどっちでも良い。
 
 登り切ると眼前に美しく紅葉した石鎚山北壁のすばらしい錦絵が広がる。撮影スポットのひとつであるが、逆光で光の具合が複雑で露出補正をいくらにするか判断に迷うので2通りの露出補正とした(どちらも失敗したが…)。
山の鎖上から成就社への連なりを展望する 
 ここから少し登ると三の鎖に分岐する。
 
 三の鎖の直下に行くと、ここを登るのかと言うほどの急傾斜で、実感は垂直に近い。2本の鎖それぞれに足をかけ、腕力で登る。鎖の具合で足をかけにくい所もあるので、固定したことを確認してから腕を伸ばす。二の鎖と違って、岩場に足を下ろせないところが多く、全部鎖の上になるので、体が十分安定したことを確認して慎重に登りたい。
 
 安定したところで後ろを振り向くと、成就社からこちらまでの山の連なりが一望できて気分がいい(左の写真)。
 
 二の鎖では他の人もいたが、三の鎖を登る人は(この時)私一人しかおらず、この景色を独り占めした感じである。
 
 息が少し上がるが、呼吸を整えカメラを構える。鎖の近くにはリンドウがチラホラ顔を覗かせている。先程のビューポイントにいた人が蟻のように見え、どれだけ急激に登ったのか実感する。
天狗岳 
 三の鎖を登り切ると弥山の頂に到達する。数m歩けば紅葉した天狗岳が威厳を持って迎える(左の写真)。土小屋から約3時間。
 
 多少光の差し方が悪いが鮮やかな紅葉で、天気も良いのですばらしいとしか言いようがない。欲を言えば、もう少し空気が澄んでいて、後2時間くらい早く着けば光の差し具合が良かっただろうことか。ただそういったマイナス点を除いてもすばらしい。
 
 web上では左の写真は暗いが、スライド映写機を使うときれいに写っている。
 
 
 昨今は、紅葉といっても「紅」が少なく「黄」もしくは「茶」が目立つようになってきたが、石鎚山頂部の紅葉はドウダンツツジだろうか、ツツジ科の葉っぱが鮮やかな真紅に染まり、まさしく「紅」葉となっている。
 
弥山を振り返る 
 撮影後、西日本最高地点、天狗岳へ向かう。
 
 多少危険な個所もあるが、しっかり体を安定させるように気をつければ問題ない。下手に体力に自信がある方が危ないかもしれない。
 
 途中北壁を直下に見下ろせる場所があるので、怖くなければ見下ろしてみるといい(左の写真)。
 
 7年前、霧の中ここを通ったとき、ちょっとのぞき込んだら、岩を登ってくる人を見つけびっくりしたことがある。
墓場尾根 
 全体的に滑りにくい岩なので、靴を密着させるようにすれば滑ることはないだろうが、油断は禁物。
 
 やがて天狗岳に到着する。振り返ると弥山とをつなぐ縦走路の赤い彩りがきれいだ。
 
 更に先の南尖峰を目指し、そこから南稜を望む(左の写真)。残念ながら紅葉は終わった後のようでちょっと残念。
 
 左の写真では分かりにくいが、岩を登ってくる一団もいた。
 
 南尖峰から更に進み、南稜の岩の上に行く。ドウダンツツジの鮮やかな紅葉があちこちに広がるが、岩の上は狭く危険。その割に人が多いのですれ違いが大変だ。
 
 下を見れば、東稜に沿って登ってくる登山者の行列が見える。東稜からのコースがあることは聞いていたがこれだけの人が登ってくるとは思ってもいなかった(左の写真)。
 
 再び弥山に戻ったときは約1時間が経過していたが、更に人が増え、ちょうど食事中の人が多く、気を遣いながら間をすり抜けた。
 
 私も紅葉した天狗岳を見ながら昼食を摂り、リバーサルフィルムでの露出ミスに備え、ネガフィルムでもう一度撮影した。
 
 さすがに11時も過ぎると光の差し方が悪くなり、紅葉のきれいな北壁が陰になった。
 
 
 ところで、記念撮影を近くにいたカメラマンに撮ってもらったが、人物は写っても、背後の天狗岳が殆ど見えないと言う間抜けな写真になっていた。できあがった写真を見て「バカヤロー!それでも写真を撮る人間か!」と思わず言って(叫びはしない…)しまった。私も人物写真は得意でないが、言われなくてもそこにいたことが分かるようなフレーミングをする。まぁ、気軽な気持ちで撮るのでそこまで考えて撮れと言うのは身勝手かもしれないが…。
 
 ちなみにトイレは山頂と迂回路の途中にある。”山のトイレ”なので非常事態以外は使いたくない。
 
 下山は迂回コースを取る。土の山道ではなく作業現場の階段のような金属製の階段や、十分とは言えない狭い道を下るが、登る人も多いのでなかなか下れない。しかし、予想以上に登る人が多い。家族連れや若い女性の姿も見える。行程が長いのでファミリー向けの山とは思えないのだが、あれだけすばらしい紅葉があると幅広い年齢層の人が集まるのだろう。
 
リンドウ 
 北壁は日陰になっているので真昼だというのに夕方のような寂しい感じの下山になった。
 
 登ってくる人も追い抜いていく人もいっこうに数が減る気配がない。ちょっと驚くのは他の人の足が速いこと。私は遅い人に合わせ、かつ被写体を探しながらなのでそう速く歩く方ではないが、ぐんぐん追いつかれ、どんどん追い抜かれてゆく。まあ、片道4.6qなので疲れて早く帰りたいので自然と足が速くなるのだろうが…。
 
 下山は撮りたいと思うような景色がないので、あまり写真を撮らなかった。山頂部は完全に陰になり、シルエットにしか写らない。唯一、瓶が森の展望が朝よりはましになっていたぐらい。
 
 13時が過ぎてもまだ登る人にすれ違う。山を午後から登るのはお勧めできない。特にこういった高い山は行程が長いし、午後に天気が崩れる場合が多いからだ。今日はあまり天気は崩れそうにないが、下山したら真っ暗ということになりかねない。
 
 ようやく国民宿舎に到着し、面河渓に少し立ち寄り、また古岩屋にも立ち寄って帰宅した。
 
 石鎚山のような高い山は気候の変化が激しく、下界で晴天でも上は荒れることは多いが、一番よい紅葉の時に晴天の中登れるというのは幸運だった。霧の漂う紅葉というのも味わいがあってよいのだが、やはり紅葉は光り溢れる中で見るのが一番だ。もう2度と会うことがない(というと大袈裟だが)紅葉に感謝、感謝。
 
 
 

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