TONARIの 色撮り撮りの「山 行」

開聞岳 (922M) 99/ 6/4
鹿児島県

開聞岳

 深田久弥の日本百名山には1000mにも満たないにもかかわらず選ばれた山がある。それが”薩摩富士”こと開聞岳である。

 以前出張で鹿児島に行ったことがあり、その時にえらく(←広島弁?)きれいな山が見えると驚いたのが開聞岳との最初出会いであった。

 
 例によって旅行会社のチラシの登山ツアーの欄で見つけた「開聞岳・韓国岳登山」に申込を行った。
 
 さすがに広島→鹿児島は遠く、それほど車に強くない私は途中で気分が悪くなり、気分のすぐれないなか開聞岳の麓の駐車場についた。
 
 開聞岳を見上げると、922mとそれほど高い山ではないのに山頂部(実際は5合目辺りから上)は雲の中に隠れ、隠れていない部分は朝日に照らされて赤く色づきだした。さすがは有名な山だけはあると感心しながら、まだ登山開始まで間があるので周辺に植えてあるアジサイなどを見て回った。

 この山は(あまり見られないことだと思うが)尾根というものがなく、”富士”の名の通り円錐形の山である。火山地形であるコニーデ型の火山の上にトロイデ型の火山が乗っている(←逆かもしれない)おもしろい山であり、登ってみるとその境目が岩の様子から判別できる。
 
 また、おもしろいことに登山道はループ式になっている。鉄道では山頂に向かって直登するのをアプト式、ギザギザに登ってゆくのをスイッチバックといったと思うが、人間が通る登山道にもこの方法がよく見られる。しかし、グルっと回って登る山は私の経験ではここしかない。

 登山道は一本道でまず迷うことはないが、登山道の入口となる2合目から少し登ったところの十字路では標識も出ており、まっすぐに進めばいいのだが、標識を見落とすと別の道にゆくので注意(私の経験からいうと下山の時一瞬考えてしまった)。

 最初はさすがは南国といった雰囲気の道で、鬱蒼としたジャングルのようなところを登ることになる。道はしっかりしているものの小さな礫が多く、下りには注意が必要である。展望地としては4合目、5合目で木々が開け、長崎鼻方面が見渡せる。

開聞岳斜面

 7合目辺りから大きな岩が転がっており、様子が変わってくる。
 
 南斜面に出ると展望が開け急斜面の下に海が開ける。
 
 開聞岳は海のすぐ側からそそり立った独立峰なので、海風がもろに吹き付ける。この辺りは大きな岩の上を歩くので少し足下への注意が必要となる。
 
 しばらくするとまた木々の中の登山道を登ることになり、やがて北斜面に入ると木々も開け、下の町が展望できる。 
 開聞岳の写真としてしばしば登場する池田湖(菜の花と開聞岳という構図)も見える。

 

 
 山頂近くにはロープと急な梯子がある場所があるが、それほど怖がるほどの登りではないので慎重に登れば問題ない。
 
 最後の最後で岩場の急登を登るが、距離は短いので眼下の景色を楽しみながら登ると良い。急登が終わると間もなく枚聞神社があり、少し行けば岩に覆われた開聞岳山頂に着く。
 
 ゆっくりと登ったので合計3時間半ほどかかったが、足に自信のある人は2時間半程度で登れるだろう。
 
 私が登ったときは雲が多かったため、麓の町こそ見えたものの、南部方向が全く見えなかった。「屋久島まで見えると書いてあったが見れなかった」とガイドブックなどでよく見るのだが、本当に見た人はいるのだろうか。

 さて、下山は長いので膝の弱い人はゆっくり下りた方がよい。まだ着かないのかというほどの距離なので、3時間はかかると認識して下山すると気分的に楽(?)である。個人的には5合目以降が小さな礫が多いので下りにくく何回か転びそうになった。なかなか下山できないので走るように下りたので危険は2倍だった。

ツツジ

 
 撮影ポイントとしては北斜面に出たときの急斜面+海岸線、山頂からの展望といったところだが、特別に”これ”というものはない。花はヤマアジサイ、ツツジ、タツナミソウ(?)といったところで種類はあまりないようだ。
 
 しかし、”薩摩富士”は富士山と同様に遠くから見るのがよい。有名どころは池田湖からの開聞岳だが、きれいな円錐状の山であるので、どの方向から見ても絵になる。私はツアー参加のため自由に動けなかったが、入浴した場所のすぐ近くが海だったので海岸に降り、海岸線と一緒にフレーミングした(冒頭の写真)。

 
 会社の人に「開聞岳は登る山ではない。見る山だ」と言われたが、それも一理あるように思う。
 
 しかし登ってみないことにはそれも分からないことである。
 
 写真的には富嶽三十六景のような”あるものプラス山”のような撮り方が良いように思う。1日かけて最も美しい開聞岳の表情を探すのもおもしろいかも知れない。

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