TONARIの 色撮り撮りの「山 行」

毛無山(けなしがせん) 02/9/15
岡山県真庭郡新庄村

ブナの大木 
 ブナは、周知のごとく、緑のダムといわれるほど保水力に優れ、ブナの多い山は水量が豊かで水がおいしい。しかし一方で、木材としての利用価値は低く、たたら製鉄のため大量に切り出され、ハゲ山となった山も多い。
 
 広島県には毛無山という山名が多いが(今思いつくだけでも県民の森の毛無山、福田頭、高野町の牧場がある毛無山、大万木の隣の毛無山、芸北町の大暮の毛無山など)、その多くはこうした木の無い山を言っていたようだ。
 
 ただ、毛無山という山名を持つものであっても、「毛」がふさふさの山も多く、今回紹介する岡山県新庄村の毛無山(けなしがせん)は、岡山県最大規模のブナ林を持つ山である。
 
 毛無山にはカタクリか、紅葉の季節に行きたいと思っていたが、呉から4〜5時間かかる為なかなか行けずにいた。しかし今回は、先日の岡山県立森林公園に行ったときのように県北に住む姉の家に泊めさせてもらって行くことにした(もちろん用事があって)。

 
 庄原から国道183号を走り、道後山の横を過ぎ鳥取県に入る。根雨まで来て右折し、県道181号に乗る。まもなく新見に下る国道182号との分岐があるので間違って右折しないようにする。四十曲トンネルという暗くて細くて長いトンネルを抜けると新庄村に入る。
 
 毛無山へは、お城のような新庄村役場を過ぎ、その先を左折すればよいのだが、トイレ休憩の為、すぐ先の道の駅メルヘンの里新庄に立ち寄る。開いていなかったので10時くらいの開店かと思いきや、「地区の運動会のため休業させていただきます」と張り紙があった。稼ぎ時に休むのはもったいない気がするのだが、運動会は地区の祭とも連動している場合が多いので仕方ないのか。この地域のパンフレットを集めたかったのに残念だ。ちなみに春には「がいせん桜」といって町並みに沿って桜並木が続いているそうなので、今度来てみよう。
 
 道の駅から少し戻り、毛無山の案内に従って右折する。案内はポイントごとに出ているのでそれに従い、女滝、不動滝の看板のそばを通って登ってゆく。道が二手に分かれるが、ここも案内に従って右折し、右手前方に見える山の家の駐車場に車を止める。20台くらいは止められるだろうか。トイレもある。この山も人気があるようで、9時前で5台以上、少し先の駐車場にも5台くらい車が止まっている。
 

テンニンソウ 
 歩き始めるとすぐツリフネソウが道に沿って大群落を作り、合間にミゾソバやオタカラコウ、シシウド、テンニンソウ(左の写真)、ツルケマンなどが見える。
 
 しばらく舗装路を歩くことになるが、ツリフネソウの群落が消えても、テンニンソウ、アキチョウジ、キバナアキギリなど花が尽きることなく続く。
キバナアキギリ 
 白馬山への分岐を右に見て、更に行くと毛無山の看板に着き、その右側を通り山道に入ってゆく。
 
 キバナアキギリ(左の写真)がちょうど良い時期のようでいくつもきれいな花を見ることが出来た。
 
  この山は、三合目、四合目、五合目と一合目ごとに標識が出るので目安となる。六合目を過ぎるとブナが段々目立つようになるが、六合大杉とある太い立派な杉もあり、トチノキ、ホオノキ、ミズナラ、リョウブなどの木が混在している。
 
サルノコシカケ? 
 七合目あたりになるとブナがぐんと多くなる。ブナの巨木も多くなり、比婆山クラスのブナの大木がたくさん立っている。
 
ブナにはどら焼きのような(笑)月夜茸がたくさんついている。とてもおいしそうに見えるが、毒キノコなので食べないように。
 
 道が良いので感じにくいが、7合目くらいからの傾斜は結構きつい。階段道ではないので歩きやすいのと、空気がひんやりとして汗をあまりかかないので、辛さはあまり感じない。急登に一段落したころ大岩の下にある8合目の標識に着く。
8合目付近のブナ林 
 見渡すは、気持ちの良いブナ林と林床を埋め尽くすクマザサで、紅葉の時分にはさぞかしきれいであることは想像に難くない。
 
 花は殆ど見られないが、このブナ林の中にいるだけで満足できる雰囲気を持っている。
 
 再びの急登を登り、やがて東屋がある九合目に到着する。この辺りはサルノコシカケをつけた木をいくつも見ることが出来る。九合目から九合五尺までは傾斜が今までよりきついので息を整えながら登り、やがて突然のように視界が開ける。
 
 あいにくの曇り空で残念だが、新庄村方面はよく見え、まだ稲刈りされていない田んぼが黄金色に輝く。日当たりが良くなるのでアキノキリンソウなども見えるようになる。びっくりしたのは(ひとつだけだったが)アカモノの花(下の写真)。6月くらいの花だから狂い咲きだろうか。しかしミヤマキリシマの狂い咲きは萎れた感じになるのに、このアカモノは勢いがある。ツツジ科の花は狂い咲きすると聞いたことがあるが本当のようだ。
 
アカモノ
 
 展望を楽しみながらしばらく登り、やがて、そこそこ広い山頂に到達する。先客の数グループが腰を下ろしていた。真正面に伯耆大山が見える。雲に覆われ中腹あたりまでしか見えないが、晴れていれば威風堂々とした巨体を目の当たりに出来るだろう。
 
 大山を正面に腰を下ろし弁当を食べる。晴れていればと空を見上げるが、降水確率40%で、なおかつ天気の不安定な山の上で雨が降らないだけ幸運ではある。雨雲が広がりつつあったので、2時間程度かかる白馬山経由の下りではなく、来た道を下ることにした。
 
 登りは1時間40分かかったので、経験上1時間強で下りられると思っていたが、傾斜がきついためか思いの外時間を取られ、1時間20分かかってしまった。
 
 下山途中も多くの人とすれ違い、特に子供連れの方が多く、中高年登山者だけでなく幅広い層に愛されている山だと感じた。
 
 自宅から遠いので、そう気軽に来られる場所ではないが、ここも季節を変えて登ってみたい山である。今回は岡山県側のルートを使ったが、鳥取県側からのルートもあるし、縦走路もある。春のカタクリは有名だが、紅葉もいいだろうし、今度はいつ来られるだろうか?
 

不動滝 
 ところで来る途中にあった、女滝と不動滝に寄ってみた。この二つは遊歩道でつながっているのだが、様子が分からなかったので、それぞれの滝の入口に車を止めて見に行った。
 
 不動滝へは、毛無山に向かう途中に看板があるので、その前の駐車スペースに止める。みんなが考えて止めれば5台止められるが、おそらく3台くらいしか止められないだろう(もっともそれほど駐車されないだろう)。
 
 遊歩道を数分下ると、落差40mのきれいな滝、不動滝に着く。滝壺が広く、懐の深い滝で、落ち着ける気持ちの良い滝だ。水量と幅が2倍くらいあれば、この滝だけで観光客を呼ぶことが出来そうだ。しかし、この雰囲気にはちょうど良い気がする。
 
 
 

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