TONARIの 色撮り撮りの「山 行」

西穂高−上高地  00/ 8/18−20
長野県

笠が岳

 いつものように旅行会社のチラシの登山ツアーの欄を見ていると『西穂高を越えて上高地へ』という見慣れぬ文字が飛び込んだ。
 
これは行くしかないと決め込み、早速参加申し込みを行った。チラシには初級者からとなっているので安心していたのだが、登山地図を見てみるとそれが甘い考えであると分かった。
 
コースは新穂高ロープウェイで西穂高口まで登り、西穂山荘→独標入口→西穂山荘→(中尾根)→田代橋→河童橋→明神といった具合だったが、参考タイムで約7時間である。私が初心者を連れて行くとしたら歩行時間は合計4時間をメドとして計画を立てるが、それを超える時間はある程度歩きなれた人でないときつい。案の定、旅行会社から初級者からと書いたが健脚の方以外は御遠慮願いたいとの電話があった。


 私自身はアルプスの方はほとんど経験がなく、数年前に白馬の八方池に行ったことがあるくらいだったが、小学生の頃兄弟で上高地に行ったことはあった。何分小さい頃のことであり、河童橋とどこかの池の方に行ったくらいの記憶しかなかった。

 約10時間の夜行バスで朝食会場のアルプス街道平湯についたのは6時前、遠くに尖った山が見え「槍ヶ岳」かと思いきや日本百名山のひとつ「笠が岳」であった。

笠が岳

 
 
 7時半頃新穂高ロープウェイに到着し、40人乗りのロープウェイと120乗りのロープウェイの2つを乗り継ぎ標高2156mの西穂高口に到着する。
 
 天気は多少モヤがかかっていたが快晴で、展望台からは西側には先ほどの笠が岳、錫杖岳、抜戸岳、南には焼岳、北東には槍ヶ岳、穂高連峰すべてが見渡せた。

西穂山荘

 
 登山準備を整え8時半に西穂高口駅を出発した。
 
 道はちゃんと整備された道で、特記することはないが樹林帯の中の道なので直射日光に晒されないものの展望があまりないことと、最後の30分くらいの道が急登気味であることぐらい。
 
 約1時間半で標高2385m西穂山荘に到達する。

マルバダケブキ 
 

 ツアーの予定では独標の入口まで登ることになっているのだが、上の方はガスがかかり展望が望めそうもないので山荘の周辺でゆっくり花の撮影をしようと決め、少し上の丸山まで行って晴れてくるようなら独標入口まで行ってみるという計画にした。
 
 山荘の周りにはヤチトリカブト、ハクサンフウロウなどが咲いていた。
 
中でも際だっていたのはヤチトリカブトで、今までこれだけトリカブトの花が咲いているところを見たことがなかった。ハクサンフウロウもきれいだった。ほかにはマルバダケブキ(当初はハンカイソウだと思った)、ミヤマアキノキリンソウなどがあった。(花は次ページに掲載
 
 山荘周辺である程度撮影した後丸山へ登ってみた。やはり独標の方はガスがかかっていたが時折その姿が見え、西穂高の山の連なりが垣間見えた。ここでは上高地を見下ろしながら弁当を食べた。

西穂独標

 
 西穂山荘でツアーに合流し、今回のコース最大の難所上高地への下りを開始した。予想通りの急坂をジグザグに下っていった。時折ゴゼンタチバナ、ヤマハハコ、タマガワホトトギス、ソバナ、キツリフネソウなどが見かけられた。
 
 登山地図では2時間の道のりだが、団体のため約3時間で上高地の田代橋に到着した。他の人も長い下りに疲労の色が見えた。思っていたより膝への負担がなく助かったが、多少足に不安がある人は十分に時間をとって計画した方がよいだろう。

 田代橋では日本200名山の霞沢岳(穂高の展望がすばらしいそうである)を見上げ、スケールの大きさを実感した。ここから河童橋へ1.5q、河童橋から宿泊地の明神館までは3qの合計4.5qは平坦路ながら長時間歩いているだけに結構きつかった。
  
 だらだら歩くとかえって疲れるためか他の人も速いペースで歩き(早く宿に着きたい一心で)、ようやく5時半頃明神館に到着した。こうして約10qを歩いた1日は終わった。
 
 風呂が気持ちよかった!
 


明神池明神池

 
 翌日はまだ薄暗い4時に起き、近くの明神池の朝霧を見にカメラと一脚を携えて出発した。
 
 上高地関係のホームページで明神池に入るのにはお金がいるとあったので、こんなに早くては係りの人がいないのではないかと心配していたが、さすがと言うべきか係りの人(穂高神社奥宮にあるので宮司さん?)がいた。¥250だった。上高地で唯一の私有地だそうだ。
 
 すぐに明神池一の池につきボートが係留してある桟橋にでる。水面上に霧がかかり幻想的な表情を見せた。
 
 次に二の池に行く。こちらは島(地糖?)が多く写真向きであった。早速ファインダーを覗き露出を見てみると1秒くらいのスローシャッターとなった。機動性を考え三脚ではなく一脚を持ってきていたが、さすがにブレる可能性があるので明るくなるまで撮影場所の下見を行った。
 
 時折カルガモの鳴き声が聞こえ、静寂のなか静かにこだましていた。少し明るくなりファインダーを覗くと1/2あたりのシャッタースピ−ドなので一脚とカメラをしっかり構え撮影する。
 
 リバーサルフィルムならば霧を考慮してプラス補正するところだが、わたしはネガフィルムなのでラチチュードの広さを考え無補正とした。
 
途中カルガモの親子がすぐ近くまでやってきて草むらの中の餌をついばんでおり、子カモが草むらにいる間、親カモが少し離れた場所で見張っている様子が印象的だった。人に対する警戒心があまりないのか捕まえようとすれば可能ではないかと思えるくらいの距離である。
 
奥様方はカルガモの写真を撮ってと御主人に頼んでいたが、まだ暗くスローシャッターになるので(1/8程度)ブレてしまうのだからそれは無理というもの。フラッシュを使えば撮れなくはないがこれは写真を撮る者の最低限のモラル。野生の生物にショックを与えてはならない。出来上がった写真は満足のいくものにはならなかったがまずまずの出来であった。明神池から流れ出る川まで行ったのだが、あの静かな湖面(池面?)には似つかわないほどの急流でとても不思議だった。
流れ流れ

明神岳

 
 
 6時頃になると朝霧が水面から上に広がり写真的な風景のピークは過ぎたが、今度は正面の明神岳の頂上付近が朝日を浴びて赤くなりすばらしい姿を現した。
 
 明神池に別れを告げ明神館から徳沢方面に5分ほど行った徳本峠別れのあたりで梓川の河原に降り、明神岳を見上げるとさっきは見えなっかったT峰〜W峰(X峰は明神館から見える)が展望できた。
 
 明神岳の右側(この位置から見て)には長七の頭というピークがありそこまでは登れるらしいのだが、ここへの登山道は地図では点線になっており熟練者向きの(若しくは道が荒れている)ようだ。

 明神館からは梓川沿いの道を通り河童橋に向かった。明神岳側のコースだったのだが、梓川の流れがとても美しくゆっくりと歩きたい場所であるが、何せ団体行動のため構図を十分考えないまま写真を撮るのが精一杯だった。
 
途中焼岳を展望でき、河童橋につけば昨日はガスで見れなかった穂高の山々が見渡せた。河童橋を手前におくとすると左から昨日登った西穂高の山々、奥穂高、吊尾根、前穂高、明神岳とその姿が見えた。河童橋周辺で写真を撮り帰路についた。

 総括としては、とにかく山が大きいこと。ツアーではなく個人で行くことも検討して登山地図を穴があくほど睨んでいたのだが、どれも登るだけで終わり、下るだけで終わりという遠隔地に住むものとしては辛い条件ばかりである。1週間くらいゆっくり滞在していたいところである。
 
 写真的にはネイチャーフォトの素材が盛りだくさんで様々にアプローチ出来る場所である。上に書いた明神池の朝霧にしてもまだいろいろと試してみたい撮り方もある。しかし、仕事を持っている人間が1週間も休暇を取るわけにはいかないので、1日だけ歩くとしたら、明神から河童橋への自然観察路がお勧めである。
 
大正池方面は歩いてはないのだが、帰りのバスの車窓から見る限りではあまり魅力は感じなかった(無論、見ていない奴が何を言うかという意見はあると思いますが)。梓川は河童橋周辺の穏やかな流れに比べ、上流の方が変化に富んで美しいように思います。


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