TONARIの 色撮り撮りの「湿 原」

尾 瀬  98/7/21〜24
(大江湿原-燧岳-尾瀬沼-アヤメ平-三条の滝-尾瀬ヶ原-至仏山)

 
 私の勤めている会社が4ヶ月ほど大変忙しく、5、6月と22時頃に帰れると「今日は早いな」と思えるような状態が続き、その様な状態が続いたためか会社から長期休暇をもらった。
 
 さて、何をしようかと考えたときに、私の両親が6月に尾瀬に行ったこともあり、行こうと思ってもなかなか行けない尾瀬に行くことに決めた。知り合いの旅行会社の人に尾瀬の山小屋と新幹線、バスの手配をしてもらい尾瀬に向けて出発した。

7月20日

新幹線で移動し、東京池袋のバスセンターから、尾瀬へいくバスに乗る。
 

7月21日
 
 今までの疲労が溜まっていたためかバスの中で気分が悪くなり、少し戻した。気分のすぐれない中御池に到着した。沼山峠の入口までは少し行ったところだが、ここのゲートが6時にならなければ開かないらしく1時間ほど外の空気を吸ったりしながら暇をつぶし、時間になってから沼山峠の入口に向かって出発した。まもなく沼山口に到着し、バスを降りて登山準備をし、尾瀬への道へと入った。
 
 実は急に尾瀬行きを決めたため、歩くコースをはっきりと決めていなかった(というより一人旅なので、体調や天気次第でコースを変更しようと考えていた)。今日の体調は今ひとつだが、天気は快晴。これは燧に登らなければならないと燧岳登山コースに決定した。

 
 この沼山口は尾瀬にはいるのにもっとも楽なコースである。大したアップダウンもなく0.7q歩けば沼山峠につく。沼山峠では遠くに尾瀬沼が展望でき、ここから40分ほどで大江湿原に着く。ろくに花の時期は調べていなっかたが、ニッコウキスゲ、アザミ(オゼヌマアザミ?)、コバギボウシなどの花がちらほら咲いていた。ニッコウキスゲで埋め尽くされた湿原を期待していたが、どうやら時期としてはズレているのだろう。大江湿原の中の木道を花を撮影しながら軽快に歩くと20分ほどで尾瀬沼の東岸に着く。今夜の宿は長蔵小屋だが、燧岳に登るので一旦尾瀬沼に別れを告げる。分岐からすぐ三本唐松が現れる(被写体にはもってこいのモチーフである)。まもなく行くと燧岳登山道のひとつ長英新道への分岐が現れたが、ひとまず、少し先の浅湖湿原に立ち寄る。ここもニッコウキスゲが咲いており、ワタスゲも咲いていた。

 
 さて、いよいよ登山である。登山道は良く整備されており、とても歩きやすい。最初の内は傾斜もさほどではないので、つい平地を歩くようなペースでグングン登っていった。しかし時間がたつにつれ、仕事の疲れと長距離の移動がこたえたか、バテ気味になってきた。普段は山でバテることがないためバテに対しての免疫がなかった。水は1gもなく、貴重な水をちびちびと飲んで山頂を目指した。この頃は若さだけでペース配分など気にしていなかったので、初めのハイペースがこたえた。しかし、時折見える尾瀬沼の美しさに勇気づけられミノブチ岳に到着する。

 
 ミノブチ岳からは尾瀬沼がきれいに見渡せ、これから登る俎嵒も見える。これらの景色に励まされ体力がしだいによみがえってくる。ミノブチ岳で景色を楽しみながら10分ほど休憩し、俎嵒にむけて出発する。30分ほどで到着したが、さすがは尾瀬!頂上付近は人であふれていた。ここからは先ほどのミノブチ岳、尾瀬沼、柴安嵒、尾瀬ヶ原、至仏山というすばらしい展望が開ける。ここで昼食を摂ろうと考えていたが、人混みの中食事するのは嫌いなので、燧岳最高峰柴安嵒で食べようと、水筒と弁当を小さなリュックに詰め、ほかの荷物は残して出発する。

 
 一旦下ってまた登り約20分ほどで山頂に到着する。こちらはそれほど人気はなく、私のほかは2グループほどいただけだった。展望は俎嵒に劣るが尾瀬ヶ原、至仏山の展望は手前に邪魔なものが無い分こちらの方がよいかもしれない。昼食後、空を見ると雲行きが怪しくなって来たので急いで引き返した。
 
 下山コースはおそらく90%の人は使わないだろうと思われる「ナデツ窪」を選んだ。上にも書いたとおり尾瀬沼東岸の長蔵小屋に宿泊するので、見晴に下りる道は論外。残るは長英新道で引き返すか、尾瀬沼西岸の沼尻に下りるこの「ナデツ窪」を使うかである。同じ道を戻るのはしゃくだし、明日の予定では沼尻のあたりを通らないのでこの道を選んだ。
 
このコースを取ろうと考えている人にアドバイスしておくと、足に自信のある人以外は使わない方がよいということ。ナデツ窪はミノブチ岳のあたりから尾瀬沼に下りる最短コースであり、1時間程度で降りれるが、急傾斜の上、大きな岩がゴロゴロしており体力と気力を奪われる。この日はバテ気味だったのでよけいきつく感じたのかもしれないが……。
 
 下山後は沼尻の休憩所で十分休憩し、尾瀬沼の周りの木道を通って長蔵小屋に着いた。
 
 
←長蔵小屋

7月22日


 
 この日の予定は、今晩の宿が見晴の弥四郎小屋なので、雨ならば尾瀬沼の周りを回って、見晴に行き、三条の滝まで行って折り返すか、晴れならば富士見峠→アヤメ平→竜宮→見晴に行くかの2通りを考えていた。幸い晴れたので後者のコースとする。
7時前に長蔵小屋を出発し、三平下、大清水分岐と通過する。途中で尾瀬沼に写った燧岳が見えたので何枚か写真を撮った。
 
 尾瀬沼に別れを告げ、富士見峠に向かって山に入り、しばらくして大清水平に着く。早朝のためか人が訪れた気配が無く、少し木道に覆い被さった草の朝露がズボンをぬらした。花はニッコウキスゲ、ワタスゲ等が大江湿原よりはよく咲いていた。木道の様子から見て、あまり人が訪れない場所なのかもしれないが、割と広々とした湿原なので、尾瀬ヶ原のような人の多いところが嫌いな人にはお勧めかもしれない。
 
 さて、本日のこのコースは本当に人が来ないらしい。私が出会ったのは1グループ4人程度。皿伏山、白尾山と二つの大きなピークがあり(皿伏山はどれが頂上だったか分からなかった−皿伏山と書かれた杭が何カ所もあった)、アップダウンを繰り返しながら進んで行く。昨日はハイペースで失敗したことを反省し、歩幅を狭くしてゆっくり目のペースで登った。白尾山頂までは長蔵小屋から約3時間ほどで到着する。ある程度の展望を楽しみ、カロリーメイトを頬張る。ここからしばらく行くと林道に出て、富士見小屋に向けて下る。

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 富士見小屋に到着し、いつもなら簡単な休憩をとってからすぐに出発するのだが、前日バテ気味であったため、無理をせず小屋の中に入りコーヒーで一服する。小屋の人に竜宮に下る道は2つあるがどちらがよいかと訊いたが、どうやら同じ感じだというので、これから行くアヤメ平に近い道にしよう。


 
 休憩後、アヤメ平に向けて出発する
 アヤメ平は昔は大変美しかったそうだが、人が多く訪れたために荒廃し、元の美しかった湿原に戻そうと保護地区になっている。あいにくと私が訪れたときはガスがかかって展望は今ひとつだったが、昔の美しさを想像できる雰囲気を持っていた。ここは尾根に当たる部分に広がっているので天気の日はたいそう美しいだろうと思われる。ここで長蔵小屋でもらった弁当を広げ昼食を摂る。山小屋の弁当に期待はしてはいけないが、グルメの方はほかに食事を用意した方がよい。
 
 尾瀬ヶ原へは長沢を下り約1時間半で竜宮小屋に到着する。下りの途中の水場(川の水を汲める場所)で水筒をいっぱいにする。前日は水が足らなかったことを考え、重くても水を汲める場所ではいっぱいにしようと考えた。しかし、小屋の方にも水場があり、気を使いすぎだったかもしれない。竜宮小屋ではゆっくりと体を休め、大休止を取った。平日とはいえ、観光客(登山者?)が多く、尾瀬沼の方よりはかなり人が多い印象を受けた。夏休みのためか小学生が多いかったように思う。
 
 一休みの後は竜宮小屋の周りで撮影を開始した。尾瀬ヶ原は大変広々として雄大と言う言葉がよく似合う。空はまだ曇天のままだが、晴れの日には尾瀬ヶ原+至仏山、尾瀬ヶ原+竜宮小屋+燧岳などの構図が大変きれいだろう。その後は宿泊地の見晴の弥四郎小屋にて1日の疲れをとった。

7月23日

 
 空はやはり曇りであるが、今日のスケジュールは山登りはないので気楽な気分で早朝の尾瀬を歩く。早朝6時半出発であるが、一体にガスがかかり幻想的な雰囲気に包まれていた。ガスがかかるとカメラのオートフォーカスが馬鹿になるので気をつけなくてはいけないが、撮影だけよりもこの雰囲気を楽しみながら歩くのも良い。


 
 見晴から約40分で平滑の滝に着く。確かに平滑の名の通りの滝なのだが、写欲をそそられるような滝ではなかったのが残念である。さらに40分行くと三条の滝につく。ここは手放しで喜べる見事な滝である。水量も落差もすごい。ただ難を言わせていただければ、撮影出来るポイントが少ないこと。展望台からと、展望台に行く途中の2カ所で、撮影という点ではありきたりな正面からの写真となってしまうので作図は難しいかもしれない。もっともこれは素人の言うことなので、みなさんはいろいろと挑戦していただきたい。ただ、滝壺は絵になると思います。
 
 さてこれからはまた尾瀬ヶ原に折り返すことになるのだが、先ほど来た道は結構険しかったので、別のコース藤吉新道を通ることにする。三条の滝から藤吉新道に合流するまで割と時間がかかり、地図から受けた印象ではすぐに合流できそうだったので道を間違えたかと心配になった。この藤吉新道は良く整備された道で、ところどころに水場があり、飲める場所に来る度に手ですくって喉を潤した。
 
 今日は山登りがなく、時間がたっぷり余るため、尾瀬ヶ原をゆっくりと散策することにした。ヨッピ吊り橋→竜宮→牛の首→山の鼻のコースである。至仏山のほうに多少晴れ間も見えて、地糖と一緒にフレーミングする。なかなか良いところである。ひとつ苦言を言わせていただければ、入山者のマナーが悪いように思う。ヨッピ吊り橋を渡ろうとしたら、周りに人が座ったり、寝ころんだりして大変目障りである。これでは吊り橋を撮ろうという気が失せる。休むのなら人の迷惑にならない小屋の周り(東電小屋が近い)で休んでもらいたい。木道上で休むな!それに橋の周りからの景色は良くないので、どうせ休むなら景色のいいところがいいぞと思ってしまった。
 
 尾瀬ヶ原はとにかく静かな表情を見せてくれた。花の季節がずれていたためか彩りは草の緑しかないが、緑は大変安らぎを感じる色である。ふと下を見ればヒツジグサが咲いており、湿原を流れる風は気持ちよく、これが「遙かな尾瀬」だと感じた。
 
 ところで、この日は体力的には問題なかったが、あの「こんにちは」攻撃には参った。自然観察か何かで来ている小中学校の生徒の挨拶は大変良いことなのだが、何せ数が多い。人生の先輩として挨拶しないわけにもいかず、山の鼻までほぼ休むことなくこの「攻撃」が続いた。有名どころで自分もそうなのだから文句が言える筋ではないが、もう少し静かにしてくれないかと思ってしまった。無論「挨拶するな」と言う意味ではないので誤解のないように……。
 
 
 尾瀬に来るとしたらやはり尾瀬ヶ原に来たいのか、尾瀬沼に比べ尾瀬ヶ原は大変混雑しており、何度か立ち止まったりしながら進んだ。水芭蕉の時はすごいんだろうなと感じざるを得ないが、人に押し押されながら進んで見る自然に何か魅力があるか?と思ってしまう。尾瀬にはそれだけの魅力があるといってしまえばそれだけであるが……
 山の鼻到着後は、見本園の方に寄ってみたが、見事に花がおらず、くたびれたニッコウキスゲが咲いていただけだった。
この日は山の鼻の尾瀬ロッジに泊まった。長蔵小屋、弥四郎小屋とは違い、山小屋と言うよりはホテルのような印象を受けた。
 

7月24日

 
 いよいよ最終日である。最後は尾瀬の名山「至仏山」である。蛇文岩で出来た数少ない山で、花の宝庫である。もっとも今日は天候が思わしくなく、初めからかっぱを着ての登山であった。到仏山の登山口としては鳩待からが一般的であるが、私は山の鼻から登った(行程上当たり前だが)。山の鼻からは直登で山頂に登る。かなりの急登で、登山道の階段の段差も大きく、岩は滑りやすい。これはバテる可能性があると見て、ゆっくり一定のペースで登ることを心がける。雨水が川のように登山道を流れ落ちてきた。この登山道は登りに使う人があまりいないのか、私のほかはあまり人がいなかったので、登山道を流れる水を口に含みながら(さすがに飲まない)ゆっくり登る。時折背後を振り返ると尾瀬ヶ原が展望でき、しばし時を忘れる。しかしすぐにガスがかかり展望が消え失せた。

 
 この登山道は大変滑りやすく、一部岩登りのようなところもあるので注意が必要である。急登であるので辛いが到着するのも早く、参考タイム2時間のところを1時間で登った。1時間も予定より早く着いたのでびっくりしたが、確かに至仏山頂と書かれた石があり安心した。ほかにも10人くらいのグループがいたが、雨がひどいため、早速下山準備をしていた。山頂付近は花が多くあったが、雨のため写真を撮る気にもならず、ゆっくりと観察することなく下山道を下った。山頂からもう一つのピーク小至仏を経由して鳩待へ下りたが、途中で多くの登山者に出会った。皆疲労が明らかに見て取れた。それもそうだろう。至仏山頂から鳩待までは約5q。山登りであるから3倍して実感として15qの道のりである。下山はおそらく山の鼻に下りるのだろうが、あの急坂は下りは大変危険であるから、かなり疲れることだろうと人ごとながら心配してしまう。この山は山の鼻から登り、鳩待へ下りるのがベストと思う。鳩待へは2時間で到着し、こうして尾瀬での4日間は終わった。

 
 尾瀬の旅を終えて感じることは、「また行きたい」ということである。この4日間で尾瀬の主だったところには行ったが、それは7月下旬の時期に回っただけで、別の季節の別の表情を持つ尾瀬には出会っていない。水芭蕉の時期、ニッコウキスゲの時期(今回は時期が済んでいた)、草紅葉の時期など、尾瀬には季節ごとのすばらしさがあるように思う。勤め人がそう何回も長期休暇を取れないので行くチャンス自体が少ないだろうが、様々な表情を持つこの尾瀬に出会いたいと思う。

 
 さて、実はこのときはまだ一眼レフを持っておらず、コンパクトカメラでの撮影だったので失敗が非常に多かった。というのも、カメラに興味を持ち始めていた時期で、接写的な取り方をコンパクトでやってしまったので、撮影最短距離より短い距離で撮影し失敗してしまった。ゆえに皆様の期待応えられ得る写真が非常に少ないことが残念である。


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