TONARIの 色撮り撮りの「山 行」

鯛ノ巣山 01/10/27
島根県仁多町

登山道脇の紅葉 
 10月下旬はブナの黄葉が美しい時期であるので、今年もブナの黄葉を楽しみに登る山を探す。
 
 ブナ林を残しているのは、広島県民の森のある比婆山が有名で去年はここに行った。立烏帽子、池の段のホツツジの鮮やかな紅葉も良い。
 
 島根県ではカタクリで有名な船通山、島根県の県民の森である大万木山、先日登った弥畝山などがブナ林を残しているが、行ったことがない山を探していると今回紹介する鯛ノ巣山に行き着いた。
 
 鯛ノ巣山は猿政山と大万木山との間に鎮座する山で、標高は1026m。地元に愛されている山で小学校の遠足で登る山らしい。
 
 三次から君田村を目指し、すっかり観光名所となった道の駅森の泉でトイレ休憩する。県道39号を君田村を通るときは道路脇のアニメキャラクターを模した案山子を見ながら、高野町に入れば木にたくさん実ったリンゴを見ながら進む。しだれ桜で有名な円正寺に行く道を左折し(円正寺はすぐの信号を右折)王貫峠を目指して北上する。
 
 辺りの山々はかなり色づいており、紅葉の見頃が始まっている。
 可部屋集成館への入口を右に見て、左手に掛合町への標識が出るのでこれに従い、町中を通り、左にまた掛合町への案内があるのでこれを左折する。道は一部狭いが、立派な道路の取付工事をしているので、そのうち走りやすくなるだろう。
 
 鯛ノ巣山の案内が出ているのでそれに従って進み、大きなカーブの所に大きな看板がある。ほんの少し先に大きな駐車場もあり、乗用車なら20台位置けるだろう。トイレも設置されている。
 看板の横の急な坂を上り、1回では回りきれないヘアピンカーブを連続2回通り、やがて右手に登山口、左手に駐車場が有るところに着く。
 
 止め方にもよろうが4台くらいの駐車スペース。ここにも登山コース案内がある。ガイドブックではコウモリ岩経由の道しか載っていなかったが、反対側の尾根を通る大滝経由の道も整備されているようだ。今回はガイドブックに従いコウモリ岩経由コースとする。
 
 最初は杉の林の中を通り、何回か小さな沢を渡りながら登る。鯛流水、清流水と表示のある水場を過ぎた頃からスイッチバックで高度を稼ぐ道となる。
 
杉とブナに挟まれた登山道 
 良く整備された道で、迷いそうなところには「登山道」の標識がポイントポイントに置かれているので迷うことはない。ゴロゴロ石もなく登山靴でなくても登れそうな道だ。
 
 アキノキリンソウが2株、散りかけのアキチョウジが1株、白いキクがチラホラと花の時期は案の定過ぎている。
 
 スイッチバックが終わり、直登気味の所に出ると、左が杉林、右がブナや他の木々の林が並んでいる。
 左の濃い暗い緑とは対照的に、左は赤や黄色で彩られた明るい林が広がる。
こうもり岩と紅葉 
 ここの急な道を登り切るとやがてコウモリ岩に到達する。
 巨大な岩が行く手をふさぎ、暗い洞窟がぽっかり口を開けている。
 
 辺りは気持ちの良い林で、爽やかに色づいた木々が岩の周りに揺れている。体力に自信がなければ、ベンチも置いてあることだしここまで来て引き返しても良いだろう。ただし展望は無い。
紅葉 
 ここからはコウモリ岩の左手(右手は道が悪いそうである)に進み標識に沿って登る。
 
 きれいで落ち着いた雰囲気の黄葉した林を歩き、いくらかの急登を登り切ると尾根道に取り付く。
 
 ここから山頂までは数分で、これまた気持ちのいい尾根道である。
 
 葉っぱは半分くらい散っているので山頂部の紅葉は先週くらいがベストだろうか。
紅葉 
 山頂からは阿井の町が見渡せ、鯛の巣山の紅葉した斜面が見える。
 看板にここから見える山が書いてあるがガスが掛かっているので判然とはしなかった。
 
 多少の休憩の後、南側にある展望の良い場所を目指す。5分くらいで到着するが、こちら側の林もきれいで言うことなし(左の写真)。
大万木山方面の紅葉
 
 この場所は岩の上になるので、目の前に余計なものもなく、鯛ノ巣山の色づいた斜面と、正面にどっしりと構える猿政山が印象深い。西手には鯛ノ巣山の南側の連なりと、その向こうに大万木山の姿が遠望できる(上の写真)。
 
 文句なしに絶好の展望台である。ここで昼食を摂り、30分ほどゆっくりする。
 
 こんなすばらしい場所なのに私意外に誰も登っていないのが不思議だったが、12時近くにもなれば数グループ登ってきた。穴場発見と密かに喜んでいたが仕方あるまい。
 
 下山はルイヨウボタンの群生地を通る大滝経由のコースを下ろうとも思ったが、ルイヨウボタンの時期でもないし、コウモリ岩周辺の紅葉が日の光を受けていい感じになっていることを予想し、同じコースを戻ることにする。
 しかし、コウモリ岩周辺は明るくはなっていたが、北斜面なので輝く紅葉は望めなかった。しかし、静かで気持ちの良い場所だ。
 
紅葉 
 比婆山のようなブナの純林も捨てがたいが、この山のようにブナだけでなく、ウリハカエデなど他の木々も一緒に林を形成しているので、様々な紅葉があってすばらしい。地元に愛されていることがよく分かる山である。
 
 下山は急斜面の割には足下も良く歩きやすい。数グループと入れ違いながら1時間程度で下山終了。
 
 ちなみにツキノワグマの生息地とのことなので、単独行や放送局となる人(笑)と同行しない場合は鈴かラジオをつけましょう。鈴(鈴といっても実際はカウベル)をつけていたのは私ぐらいだったが…。
 
 午後1時の時点で駐車していた車は、上側が4台、下側が6台とそこそこ人気のあるようだ。
 山頂はそれほどは広くなく、比婆山のように多くの登山者が来ると窮屈なので、登山者がチラホラいる程度の静かな山であって欲しい。
 
 案内の看板によれば、昔は鯛ノ巣山を「志努坂野(しぬさかぬ)」と呼んでいたとのこと。雰囲気的に出雲神話と関係がありそうだ。
 漢字の意味から強引に解釈して、「志を持って努力しなければ登れぬ急な坂の山」の意味かと勝手に思ったが、漢字の無かった時代からの言葉だろうから当て字が使われる場合が多いのでかなりの見当外れだろう。
 
 多少急な坂が続くが、道は歩き易くゆっくり歩いても山頂まで2時間もかからない(一般的には1時間半ぐらいか)ので、また私のお気に入りの山が増えた感じだ。
 
 植物も豊富そうなのでまたルイヨウボタンの咲く頃を狙って登ってみることとしよう。
 

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