TONARIの 色撮り撮りの「山 行」

天 神 嶽 02/12/1
広島県賀茂郡豊栄町

登山道 
 広島の山のガイドブックに紹介される山で、県央の山は少ない。登れる山が少ないという訳ではないが、県央の山は、標高は500m前後とそこそこ高いが、平地部の標高も高いので高低差が少なく、登頂欲が湧かないのだろう。車で上がれる山が多いのも原因か。

 そんな県央にあって登頂欲をそそる有数の山が、今回紹介する天神嶽である。板鍋山の山頂から見る姿は大変美しく、雄大に裾野を広げる様はまさに霊峰と呼ぶに値する。

 以前は北側の天神沖から登り、今年の冬に南側の安宿から登ろうとしたが、積雪のため登頂を躊躇したことがあったので、積雪のない内に再度安宿から登ることにした。
案内図 
 国道375号線で豊栄町へ北上する。国道沿いに走ると、豊栄町役場へ入る道の角に市場が出ており、トイレはここで借りるといいだろう。新鮮な農産物を売っているのでよかったらどうぞ。

 国道に戻って進み、国道486号へ右折する。左に小学校を見て少し進むと「天神道」と案内が出るのでそこを左折する。八幡神社にぶつかったら左折してすぐに「天神道」の案内が出るので、その周辺の空き地に車を止めさせてもらう。
 
 山登りの前に八幡神社に寄ってみる。ボダイジュやオガタマノキ、モミの巨木などがあるので興味がある方はどうぞ。豊栄町には巨木が多いと聞くが、所在地などの情報が少ないのでどこにあるのかよく分からない。

 神社横の道を天神道の案内に従って歩く。いくつか分岐があるが、ポイントごとに案内が出るので迷うことはない。林道を2回またぐと登山口に到着する。林道は未舗装箇所があるものの、ひどい凹凸はないので一般車でも登山口まで入ってこれると思うが、たいした距離ではないので、八幡神社から登るのがよいと思う。

 道路地図を見ると、この天神嶽には点線の道が幾筋もあり、人々の往来が盛んだったことが推察される。登山口から10分行ったところに「角休み」があり、安宿に向かう人、帰る人がもう少しで安宿だと休んだ場所とのこと。道に沿って多くのお地蔵様がいるので、地元の方の信仰、愛着を感じる道である。
 
霧の中の山道 
  更に10分でため池に着く。歌碑が建てられているが、達筆なので読めない。どうやら天神嶽を称える歌のようだ。今日は天気がよく、豊栄の町は霧に包まれており、ため池にも霧が立ちこめ幻想的な雰囲気を醸し出している。そばには阿弥陀堂があり、多くのお地蔵様が並んでいる。

 豊栄町の町木はアカマツだったと思うが、それを表すかのようにアカマツが多い。松茸が採れるシーズンは、この道で登ると要らぬ嫌疑をかけられそうなので遠慮した方がよいだろう。入山禁止の看板もある。

 ため池の周りは多少ぬかるみがあり、小さな川が幾筋か流れているようだ。このため池を過ぎると3カ所ほど分岐があるが、「左 天神道」などと案内が出るので迷うことはない。

 やがて緩やかで広い道が狭まり山道らしくなるが、登り易い道だ。
 
 上の方が明るくなり倒木の下を潜ると、まもなく中天神と東天神との鞍部に出る。八幡神社から約45分。今日は単独行なのでペースが速いが、一般的には1時間程度だろう。下界は霧に包まれていたので、今日は雲海が見られると期待して、展望の良い東天神を目指す。急坂だが距離は短いのでのんびりと登ろう。
 
雲海に浮かぶ板鍋山 
 天神嶽はアカマツが多い山であるが、山頂部の稜線近くは落葉樹も多く、紅葉も期待できるかもしれない。

 急坂を登り切るとやがて展望台となる大岩のテラスに到着する。

 鞍部から約10分。

 予想通り雲海が広がり、板鍋山、鷹ノ巣山、カンノ木山、大土山が白い海の上に浮かぶ島のように展望できる。深入山も見えるのではないかと期待していたが、遠くの方はかすんで見えなかった。雲海といえば三次の雲海が有名だが、この辺りでもよく見られる。

 10分ほど景色を堪能し、中天神に向けて出発する。天神嶽は一の嶽(中天神)、二の嶽(西天神)、三の嶽(東天神)の3つのピークから成り、三角点は西天神にある。どのピークも展望がよいので弁当を広げる場所には困らないが、それぞれ展望できる向きが違い趣が異なる。

 中天神に向けて軽快に歩き、昔、天竜夫妻が修行したという庵を過ぎ、短い急坂を登ると天神沖からの登山道と合流する。この天竜夫妻が作ったという石仏が、庵の中や周辺に座している。なお、この辺は”人の気配”がするのであまり好きではない。中天神へは数分で着く。天神嶽の説明看板付近から岩の上に登ると、「忠孝」と彫られた岩があり、ここからの展望も良い。

 今日は霧が深すぎて一面の雲海だが、県北の山々や、世羅台地、賀茂台地の展望が開ける。「忠孝」の隣の岩の上に登ってみると、山に登ったという気分になれて気持ちがいい。
 
朝日を受けて輝く松の葉 
 次に三角点のある西天神へ向かう。

 こちらも快適な尾根歩きを10分もすれば到着する。見える範囲は東天神と似ているが、角度が違うので趣が異なる。

 霧は依然として晴れず、ホワイトアウト状態。10時には消えるとふんで1時間弱霧が晴れるのを待ったが、ほとんど晴れず、今度は光線の差し方が悪くなって写真にとってもおもしろくないので、あきらめて中天神に戻り昼食にした。

 展望が良いので人気がある山だと思うが、この日に会ったのは一人だけと寂しい。それとも午後からの登山者が多いのか。こういう展望の良い山は、午前中の澄んだ空気の中展望を楽しむのがベストなのだが…。
 一方で人目を気にせずのんびり出来るのはうれしいのであるが。
 
 下山は中天神から1時間程度。急傾斜がないので膝への負担は少ない。誰ともすれ違わない、晩秋を象徴する静かな山行となった。
 
 安宿からの道は天神沖からの道より多少行程が長いが、全体的に傾斜が緩やかで歩き易い。道もはっきりしているので積雪があっても登れそうだ。天神沖からのコースは、登山道と思えないほど広く、山に登っているという雰囲気がない。花のないこの時期にしか登ったことがないので、花が咲く時期に訪れてみよう。
 
 ところで「安宿(あすか)」とは珍しい地名だ。神話と関係ありそうな名前だが地名の由来はどういったものだろう。天神嶽は江の川、太田川、沼田川の分水嶺に当たり、昔から交通の要所として栄えたそうだから、”安い宿”があってもおかしくはないのだが、”あすか”の意味が想像できない。
 
 自治体のHPを担当する方にお願いなのだが(見てないよなぁ…)、こうした地名の由来には歴史的な意味合いがあるはずなのだから、町の紹介をするページにでも解説を入れていただけると、その町をもっと知ってもらうきっかけになると思うがいかがなものか。
 
 

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