TONARIの 色撮り撮りの「紀行」

現代アートの島 直島の旅’12 2012年12月15日〜17日
香川県香川郡直島町

【12月16日】つづき
ベネッセハウス「ミュージアム」 
 本日宿泊するのは、ベネッセハウスの4つの宿泊棟の内のひとつオーバル。美術館に泊まるという普通ではあまり体験できないホテルである。

 ベネッセハウスは安藤忠雄が設計し、今では多くの美術館の建築を手掛けているが、このベネッセハウスがその第1号だそうだ。

 ミュージアム棟は10室だけ、私が宿泊するオーバル棟は6室だけ、宿泊者が多くなったことを受けて新しく作られたパーク棟とビーチ棟があり、各部屋にはアーティストの作品が飾られているという(アート好きには)贅沢なホテルである。

ベネッセハウス
オーバル
オーバル 
  その中でもオーバル棟は山の上にあり、宿泊者専用のモノレールで5分ほど登ったところにあって別格な宿泊棟である。

 スイート2室、ツインは4室。スイートは2人で7万円ととても手が出ないので、ツインを予約。それでも2人で4万円、なおかつ食事代別(笑)

 一番リーズナブルな料理でも夕食朝食合わせて8千円なので2人で5万6千円。

 新婚旅行だから出せる金額だが、宝くじでも当たらなければもう泊まる機会はないかもしれない。オンシーズンだともっと高くなる^^

 モノレールは結構急勾配のところを登り、景色はまずまず。傾斜が緩くなったらまもなく山頂駅?操作はボタン式で、駅にモノレールが居ないときは呼び出しボタンを押す。もし他の宿泊者が乗って出た直後だったりしたら最悪10分は待たされるのだが、オーバル棟宿泊者のみ乗ることが出来るので特別感がある。ベネッセハウス自体お値段が良いホテルなので、どうせ高い宿泊料を払うならオーバルがお勧めである。
 
405号室 405号室 
  オーバル棟に着くとガラス張りに廊下から人工の階段状の滝が見え、そこを抜けるとオーバルの名前の通りの楕円形に作られた空間に着く(上の写真)。

 中央には水が張ってあり、水が流れている。上にも上がれるので探検心が湧くが、取り敢えず荷物を置くのに部屋に入る。

 さすが高級ホテルだけあって、ホテルのスタッフが荷物を持ってくれる(当たり前?)。私のカメラバックは重いのに^^

 宿泊したのは405号室(左の写真)。

草間彌生のかぼちゃを見下ろす 
 部屋毎に作品が違うのでどれがよいか迷うが、アーティストが実際に来て壁にドローイングした?この部屋にした。

 デイヴィッド・トレムレット『ウォールドローイング・アット・ベネッセハウス#405』。

オレンジを基調として明るい感じだったこともある^^

 広さ自体はそれほどでもないのだが、セミダブル?のベッドだし、ユニットバスだが足が伸ばせるほどの広さがある。2人なら十分な広さ。

 ←展望は勿論良く、浜辺にある草間彌生の黄色い『南瓜』が見下ろせる。これは望遠レンズで撮影。
オーバルの屋上オーバルの滝
オーバルからの
夕焼け
オーバルからの夕焼け
 早速の記念撮影後^^オーバルの屋上に上ってみる。

 360度の展望で、瀬戸内海が美しい。ちょうど夕暮れ時なので、格別である。

 何やかんやらしているとミュージアムツアーのある17時が近づいており、17時までなら頂けるウェルカムドリンクを飲みそびれた(笑)
オーバルからの夕焼け

  モノレールでミュージアム棟に行き、フロント前でツアー参加者が集合…でも、私たちだけでプライベートツアーになった。オフシーズンだから(笑)案内するのはホテルのスタッフで、どのスタッフでも作品解説が出来るようで、人によって紹介の仕方も違うそうである。全部の作品について書いていると大変なので、いくつかかいつまんで。

 柳幸典の『バンザイ・コーナー』。

 ソフビのウルトラマンの人形が扇形に並べられていて、壁が鏡になっているので円に見える。台座は白いので、日本国旗に見える。これは日本人を表していて、周りに従ってバンザイしている同調性、没個性。そして鏡に映っている3/4は虚像ということで、実際にバンザイしているのは1/4で、あとの大多数はそれに合わせているだけというメッセージ。

 なるほど。最近、理事をしているNPOの月刊誌で、世間をテーマにした文章を掲載したこともあり、それに通じていると思われる。著作権と掲載費が関係なければ、この作品の写真を載せたかった^^

 階下に行くと同じ柳幸典の作品。「ザ・ワールド・フラッグ・アント・ファーム1990」。世界各国の国旗が並べてあるが、虫食いのようになっている。甘い砂に着色して国旗を作り、その中に蟻を放っておいたらこんな感じになったのである。蟻が崩した国旗の模様、自由に行き交う蟻たち(もう蟻は出してある)。国境の意味を考えさせる作品である。
 広島市現代美術館でも展示されたことがあり、既に見ている作品だが、柳幸典の作品は面白い。最近では尾道の百島で新たなプロジェクトを始動しており、今後の活躍が注目される。

 そばにある大きなガラス戸を押すと外に出ることが出来るが、外には柔らかいフォルムの大理石が2つあり、大勢で寝転ぶことが出来るようになっている。安田侃「天秘」である。
 上を見上げると建物で四角く空が切り抜かれている。タレルの作品と似ているようだが、雰囲気は違う。
 冬なので冷たいが、冷たい大理石に暖かさを感じるフォルムで、寝転ぶと空と会話するような雰囲気である。温かい昼間に見るとまた感じ方が違うだろう。
 
夜のベネッセハウスミュージアム 
 もう一つ外に出る作品があり、建物の一角が切れて夕日が見られるようになっている。その両側の壁に水平線の写真が何枚も飾られていて、実際の水平線と合わせるようにしてある。

 杉本博司「タイム・エクスポーズド」である。

 水平線以外は人工物がまったく無く、海と空だけ。白黒写真なので地域による空や海の色の違いも分からない。水平線は不変なものの象徴としているようである。

 写真作品なのに屋外に展示されているので劣化が心配なところだが、不変をテーマにしているので、経年劣化に挑戦する?意味合いもあるのか杉本博司は敢えてそういうところに飾っているそうだ。地中美術館下の崖と、ベネッセハウス南側の岬にある崖にも、不自然なようで居て何か調和しているような感じで設置してある。

 リーウーハン美術館からの帰り道で見た黄色と黒の船だが、その絵がこのミュージアムに飾ってある。ジェニファー・バートレット「黄色と黒のボート」。この絵を見て、「あの場所だ!」と分かった。絵に描いてある場所を実際に見るとなんだか楽しくなる。

 最後は中心部にある円形の大きな部屋にある作品。ブルース・ナウマン「100生きて死ね」。ネオン管が数秒ごとに点灯し、文字を読ませる。そして最後に全部が点灯して明るく輝く。人生において直面する事柄がランダムに表示され、それをなぞっていくことで人生を体験させ、そして輝いて死ぬという訳である(笑)

 この展示室の天井は明かり取りになっていて、照明はされておらず自然光だけ。だから夜は暗闇になってこの作品のネオンが輝いている。朝はまた違う雰囲気で、自然光で作品の見え方が変わるというのは面白い。

 家プロジェクトの「碁会所」で見た須田さんの『雑草』もさりげなく展示?されているので探してみると良い。
 
一扇 夕食 
 ツアーが終わり、食事までの時間が少しあるので、他の作品も見に行き、時間になったので、展示室内に入り口がある「一扇」で食事にする。

 さすがにオフシーズンだけあって、なんと我々だけの貸し切り(^0^)

 他の宿泊者はパーク棟のレストランに行ったようだ。

 評判は良かったので期待していたのだが、期待通りの料理だった(^−^)

 薄味なのにしっかり出汁の旨味が感じられどの料理も美味しい。

 一番リーズナブルなコースにしたのだが、これで十分である。

 男性には少し物足りない量かもしれないが、ゆっくり食べるし腹八分目くらいのちょうど良い量である。

 一人6000円と少し高いようであるが、きちんと料理の仕事がしてあるし、妥当な値段である。
花 
 食後はパーク棟でのツアーに参加するのでシャトルバスに乗ってパーク棟へ。

 少し早めに着いたせいかまたも我々だけだったので、こちらでもプライベートツアーかと思ったが、こちらに宿泊している人は多いようで、10名程度のツアーとなった。

 こちらには杉本博司の水平線の写真の大きなものがあるが、他には劇場を撮影した作品がある。
 長時間露光撮影でスクリーンに映る映画を撮影し、時間を表現した作品。

 写真は一瞬を切り取るのだが、動画のように流れる時間を撮影することは出来ないので、こうすると時間を写すことになるという訳である。

 時間を写すということであれば、滝の写真を撮るときにスローシャッターにしたり、星空撮影したりするときに長時間露光して光の線を描いたりするなどの表現が一般的だが、このような発想の写真は面白い。まあ、説明が無ければただの劇場の写真としか見えないのであるが(^^;

 中庭があり、細長い切れ目があって、その先に不思議なオブジェがある。数学が苦手なのでよく分からないが、数式を形に表した数理模型だそうだ。ライトアップされていて、造形的に美しく、昼間に見るとまた違って見える。

 パーク棟入口から階段を下りた所にあるのは杉本博司の『石棺』。
 足元にはベンチのように長い、内部から照明がされて光っている“棺”が横たえてある。壁にはなにやらぼやけた写真がある。
 一段下がった隣の部屋と一体になっているのだが、そちらは宗教的なものをキーワードにして、キリスト教、イスラム教、仏教に関係する建物が撮影されている。こちらも鮮明ではなくぼやかしてあって朦朧とした写真である。
 上の段のベンチ?の足は「護王神社」で見たように光学ガラスで作られている。ということは、この空間は聖域をイメージしたものか。

 夜の展示室は薄暗く、過度な照明はないので、より静謐な雰囲気となっている。
 もともとは資料を置いて入館者が閲覧する場所として考えられていたそうだが、展示室の構造を改変してこのような展示にしたとのこと。ここも安藤忠雄の建築であり、建築家も芸術家なので自分の作品を変更するなど許されないことなのだが(変更許可はかなり厳しいらしい)、それを納得させるだけのものがあったのだろう。

 無料のラウンジでセルフのハーブティを飲んでから(^^;ミュージアムまで送迎して貰う。
 
夜の
オーバル
オーバル 
 オーバルに戻ると、ライトアップされて昼間とは違う空間になっていた。

 時間帯によって印象が変わる考えられた建築である。

 オーバル棟の宿泊者だけしかこの作品を鑑賞できないのだから、やはりここに泊まるべきである。
オーバル
405号室おむすび 
←部屋に帰ると夜食用におむすびと漬け物が置かれている。

 なお、非日常感を味わうため、テレビは置かれていない。

 土曜日の午前中に期日前投票をしてから来たので、日曜日は開票日。よって選挙開票番組を延々と見させられることが無くてよかった(笑)

 あれって、NHKだけ放映すれば事足りる気もするのだが(^^?

 山の上なので静かで生活音がしない。アーティストの作品に囲まれた特別な空間である。
 
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