TONARIの 色撮り撮りの「山 行」

半四郎山 2 02/5/25
島根県匹見町

カエデの葉 
 現在どの山に登っても舗装道路、林道、鉄塔、電線、アンテナなどの人工物が数の多少はあるにしろ目に入ってしまう。
 
 これらの人工物で人の生活が豊かになるのであれば良いのだが、無駄であったり、自然を破壊するだけならば造る必要はないだろう。
 
 人間に限らず、ツキノワグマなどの野生生物の生息域を破壊する場合も少なくない。膨大な国の借金のため、日本の格付けが引き下げられつつある今、税金を無駄遣いするような行為は十分に再考願いたい。
 
 昨年の夏、人工物が一切見えない半四郎山に登ったとき、ある種の感動を覚えた。まだこんな深山が残されているのである。新緑の季節に登ってみたいと再びの山行である。
 
 国道488号沿いの相変わらず美しい中津谷渓谷を見ながら匹見町を目指す。裏匹見峡はまだ通行止めのようだ。一年近く経ってもまだ復旧されないとは国道と言えないだろう。それだけ脆い地層でもあるのだろう。
 
 今問題となっている十方山林道の入口を過ぎ、峠を越えて匹見町に入る。20分程下って広見林道に入り、登山口近くのスペースに車を停める。オフロード車でないと少し不安だが、距離は短いので車のお腹を擦らないように気をつけて進む。
 
 橋の手前の登山口から山に入り、石組みの間を登ってゆく。石組みを過ぎ約20分程で川を渡る。川の水は冷たくて癖がないので飲用しても良いだろうが、がぶ飲みは控えた方がいいだろう。
 
ナルコユリ 
 杉林が続くほぼ一直線の道でやや単調ではある。
 チゴユリ、ナルコユリ(左の写真)などが咲いているが数は少なく、花自体はあまり多くない山なのだろう。一ヶ所ヤブレガサの群生地があった。
 
 いくつか倒木もある。
 
 目の端に鮮やかさはないがコケイランのような形をした花を捉え、早速近寄ってみた。
 葉っぱがなく、ランの鮮やかさはないが、花の形はランだ。どうやらムヨウラン(無葉蘭)のようだ。広島県の希少種であり、私も初めて見た。派手な花ではないので知らない人は気付かないし、知っていても家には持ち帰らないだろう。根が深いそうなので盗掘も難しいだろうが。
 
 ムヨウランの写真を掲載していないのは、見るに耐えないほどブレてしまったからである。フラッシュを使うとこの手の花は白く飛んでしまうのでフラッシュは使えない。さすがに1/6のシャッター速度ではブレてしまった。
 
新緑 
 谷を登り、尾根に取り付くため方向を変える頃、杉林が松林に変わり、傾斜がきつくなってくる。昨年の夏にはミヤマウズラがいたが今回は何も花が見つからない。
 
 松林は単調に見えるので注意していないと道以外の場所に踏み込みそうになる。下りの時は特にそうなので気をつけて。
 
 左に進む短い水平道を過ぎれば尾根の取り付きまで少しである。
 松林の暗い森を抜け、広葉樹が混じり明るくなってくる辺りが尾根の取り付きとなる。
 
 樹間から五里山の連なりの一端が見え気持ちいいが、直射日光にさらされるので暑くなる。
 
 まだかまだかと登ると、ようやく新緑のきれいな半四郎山の山頂が見え、快適な尾根道になる。夏はナンバンキセルがいた道の周りのクマザサは刈ってあるので歩きやすい。チラホラ現れるレンゲツツジを見ながら登山口から1時間40分ほどで向半四郎山に到着する。
半四郎山・恐羅漢山・十方山・五里山
 
 今日は雲一つない快晴で遠くまでよく見える。1118mピーク向半四郎山からの展望の良さは、比婆山の池の段からの展望に匹敵しよう。360度の展望で、北に春日山、広見山、東に移動して半四郎山、その向こうに恐羅漢山、十方山、南に移動して五里山、吉和冠山、寂地山、大神ヶ岳、西に移動して安蔵寺山、青野山、十種ヶ峰と西中国山地の主だった山を展望できる。
 
 前回は曇っていたので分からなかったが、人工物は少しだが見える。しかし、嫌悪感はなく、自然の中に埋没している印象だ。
 
 小休止後、半四郎山に向かう。前回は先が見えないほどのヤブ漕ぎと、濃霧が重なり引き返したが、今は道がはっきりしている。ホンゾウのクビレと呼ばれる鞍部まで下り、また登る。約20分で広めの広場がある半四郎山に達する。昨夏は鞍部まで来て引き返したが、踏み跡もしっかりしており距離も短いので、少しのヤブ漕ぎを我慢すれば進めないことはないことが分かった。
 
 道端にショウジョウバカマがつぼみをつけているのを見つけびっくりした。さすが豪雪地帯だけあって春は遅いようで、1ヶ月は季節が違うようだ。
 
 しかし、レンゲツツジ、ヒメハギなどは咲いているので遅いとも言えないが…。
 
 さて、展望は向半四郎山の方が良いが、半四郎山からは恐羅漢山の展望が抜群である。多くの人はスキー場がある面しか見ることが出来ない山であるが、広島県最高峰はこちら側から眺めるのが良い。
 
 今日は誰とも会わないだろうと思っていたが、単独行の登山者3人と会った。皆、広見山へ縦走するようだ。
 お一人ツキノワグマ研究所の方がおられ、ツキノワグマについてのパンフを頂いた。匹見町はツキノワグマの生息地であると言われているので調査に来られたのだろうか。
 
 中国山地、特に匹見町近辺はツキノワグマの生息地なので、特に早朝に山を歩くときは鈴、ラジオなど自然界にない音を出すものを必携のこと。
 
 昼食を摂り、引き返す。陰がないので真夏は辛いだろうが、この展望の良さは暑さを我慢する価値はあるだろう。石ゴロゴロの道ではないので、下りでも歩きやすいが、ほぼ直線と思える道は少々うんざりする。花が少ないのが少々残念だが、やはり私のお気に入りの山である。
 

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