TONARIの 色撮り撮りの「山 行」

新緑の 鯛ノ巣山 02/5/12
島根県仁多町

ヒメレンゲ 
 鯛ノ巣山は、昨年秋に一度登っているが、稜線部から始まるブナ等の森の美しさ、コウモリ岩に代表される巨岩、伯耆大山・猿政山・大万木山等の展望の良さと、すっかり気に入ってしまった山である。
 
 秋に登ったときは花はなかったが、春や夏には十分花は期待できると感じたので、群生地があると案内板のあったルイヨウボタンの時期を狙って登ってみた。
 
 朝5時前に呉を出発し、休憩を入れて約3時間で登山口に到着。朝の8時から登り始めるのは私ぐらいであるから、下の駐車場はもちろん、登山口の駐車場も車はいなかった。アクセスは前回の記事を参照ください。
 
 登山口に車を置き、今回は大滝経由のコースで登るので、念のためスパッツを着用して歩き始める。10分ほど水平道を歩き、やがて大滝の表示のある箇所に着く。インターネットで調べると、大滝のことを書く人すべてが、「たいしたことがない。」と言っているので期待はしていなかった。
 しかし、横幅こそないが、水量もあり、落差は10mくらいはあるので、まずまずの滝である。もっとも、この上流には同クラスの滝がいくつもあるので、ここだけを「大滝」と呼ぶのはおかしな気はするが。
 流れのそばには鮮やかな黄色いヒメレンゲの花が、岩にへばりつくように群生して咲いているのできれいである(上の写真)。
 
 大滝経由のコースは、杉や檜の植林の中に作られた登山道で、よく整備してあり安心だが、その分階段が多いのは仕方あるまい。前日の雨のせいもあろうが、土が軟らかく、泥状になっているところも多いので滑りやすい点を考えれば、階段を作っている方が安全で、道の保護にもなるだろう。
 
 マムシグサ、サワハコベなどの花が見られたが他には見当たらなかった。

 早朝の霧が渓流沿いに溜まり、幻想的な雰囲気に包まれる。やはりこういった高い山は早朝に登ると気分がよい。これが植林地帯でなければなおよいのだが。
ルイヨウボタン 
 さて、急傾斜に喘ぎつつも、約1時間でルイヨウボタンの群生地に着く。
 
 しかしルイヨウボタンの花が見つからない。時期が違うのかとも思ったが、ボタンの葉っぱそっくりのルイヨウボタンの葉っぱも、他の葉っぱが多すぎて、群生地という割にはあまり見つからない。
 
 立入禁止を無視するわけにもいかないので、登山道脇から望遠レンズで探すが分からない。派手な花ではないので余計見つけにくいが、結局群生地から少し離れたところでひとつだけ見つけることができた。
 
ユキザサ 
 ユキザサの花が多く、ルイヨウボタンの群生地というよりユキザサの群生地と言った方がいいかもしれない(左の写真)。
 
 ルイヨウボタンの群生地から少し登るとブナ林となり、爽やかな新緑を味わいながら、やがて尾根道に取り付く。
 
 下界では散ったミツバツツジが咲いている。大きな岩の上に登ると巨大な猿政山が目の前に現れ気持ちがよい。
 
 ここからアップダウンのある尾根道となるが、若いブナ林の新緑の中なので疲れを感じない。鯛ノ巣山のブナ林は、比婆山のような純林ではないものの、若さあふれる森のように感じる。時折ブナの老木が現れては森を引き締めているようである。
 
 山頂の手前くらいに、木々が切り払われたベンチの置いてある場所があり、展望がよいのだが、ブナ林を伐採したとしたら少し残念である。
 
 山頂に着くと雲海が広がっていた。雲海の上にひときわ高く聳える伯耆大山とその手前に船通山が顔を出していた。この展望もブナ林の伐採のお陰と思うと気が引けてしまうが、この展望に登山客が引きつけられる点もあるのだから仕方なかろう。
 
 軽い休憩をとり、南の展望台(崖の上だが)を目指す。ここからは伯耆大山から大万木山まで見渡せ、何より猿政山の展望が抜群なので大好きな場所だ。ここで早い昼食(9時半なので朝食?)を摂り、展望を楽しむ。(おそらく)ベニドウダン、コメガヤの花が咲いていた。
 
 下に国道があるので時折車の音が聞こえるが、交通量は少ないのでゆっくりできる静かな山である。何年後になるか分からないが大万木山と鯛ノ巣山の間に松江・尾道線が通るので、騒音だけでなく、森林破壊が進むだろう。
 
 公共事業の見直しでこの高速道路の話は中断しそうではあるが、政権や経済状態が変われば造ることになろうし、地元の要望も強く、既に開通している箇所もあるので、何だかんだ言っても何年後か数十年後には開通しよう。
 
 高速道路の開通で過疎地と呼ばれる地域が潤えばまだよいのだが、単なる通過地点となり、利益を得るのは一部の建設業者だけというのなら、自然破壊の代償は甚大のように思うが…。
 
こうもり岩周辺の新緑 
 山頂に戻り、コウモリ岩経由コースで下山する。
 実はルイヨウボタンの群生地を通る予定がなければ、こちらのコースで登る方が花は多く見ることができる。大滝コースは植林の中を縫っているので、ブナ林が始まる辺りまでは花は少ないように思う。
 
 目立ちはしないものの、チゴユリはところどころに多く見られた。目立つユキザサの白い花も多く、蕾状態のものもあるので写真を写すのなら花の勢いのあるこの時期が一番いいだろう。
 
 多少ぬかるんでいるので滑らないように気を付けて下るが、新緑がきれいなのでついついよそ見をしてしまう。山頂からコウモリ岩までの間のブナと他の木々によって構成される森は本当に気持ちがよい。
 
 コウモリ岩で小休止をとる(上の写真)。10時も過ぎれば登山者も多くなる。登山道の整備状態といい、町が力を入れているのかもしれないが、自然を壊すことになるのでこれ以上の整備はやめた方がいいだろう。
 
 大万木山のように林道まで造って欲しくないが、林道らしき広い道路が南面にあるので舗装路を造るかもしれない。
 
コケイラン 
 コウモリ岩を過ぎてもチゴユリ、ユキザサは多く、コアジサイは蕾状態。ツクバネソウやガマズミは丁度いい時期だろうか。
 
 清流水、鯛流水と過ぎ、約1時間で下山。途中葉っぱの陰にコケイランを見つけた(左の写真)。
 
 花に気付かず通り過ぎた登山者がいたので、教えてあげようかと迷ったが、少し遠くまで行っていたし名前が思い出せなかったのでそのままにした。
 
 花は下りより登りの方が見つけやすいので、まだ他の花もいたかもしれない。案内板にはイワカガミがいるようになっていたが、時期的にはいてもおかしくないので見落とした可能性が高い。
 
 時期をずらしてまた登ることにしよう。

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